2017 Fiscal Year Research-status Report
膵癌前癌病変周囲の間質細胞由来exosomeに着目したバイオマーカーの開発
Project/Area Number |
16K10601
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮坂 義浩 九州大学, 大学病院, 助教 (40507795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白羽根 健吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10529803)
当間 宏樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80437780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵癌 / 膵液 / 膵星細胞 / エクソゾーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々なタンパク質や核酸を含む直径100nm程度の小胞で細胞間の情報伝達を担うエクソゾームに着目し、膵癌自然発生遺伝子改変モデルマウスを用いて、膵前癌病変周囲の間質細胞に由来するエクソゾームを同定・解析して新たな早期診断バイオマーカーを開発することである。 膵癌は外科切除不能な段階で診断されることが多いため、早期診断のためには膵癌発症の危険因子ごとに発癌・進展に至る詳細なメカニズムを解明し、精度が高く汎用性のあるスクリーニング検査を開発することが求められる。 本年度は、ヒト膵癌切除症例において術前に施行した内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)下に膵液を採取しえた症例の膵液から、超遠心法を用いてエクソゾームの抽出を行った。対象群として、膵癌ハイリスク因子である慢性膵炎症例からも同様に、膵液からエクソゾームを抽出した。抽出したエクソゾームは電子顕微鏡で直径100nm程度の小胞であることを観察し、Western blotting法でエクソゾームマーカーであるCD63、CD81、TSG101の発現を確認した。さらに、エクソゾームからRNAを抽出し、膵癌診断能を血清CA19-9及び膵液細胞診と比較した。エクソゾームにおけるmiR21、miR155の発現解析では、慢性膵炎症例と比較し膵癌症例で有意に発現が高かった。また、miR21、miR155のAUCを評価したところ血清CA19-9と比較して有意に膵癌診断能が高い結果が得られた。さらに、miR21、miR155の膵癌正診率においても、それぞれ膵液細胞診と比較して高い正診率が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌自然発生遺伝子改変モデルマウスを用いて、膵癌ハイリスク患者の疑似的モデルとして肥満モデル及び慢性膵炎モデルマウスを作製した。肥満モデルでは、膵脂肪組織と膵癌浸潤、転移との関連を解析し、脂肪酸が新たな癌間質相互作用の治療標的となり得ることを明らかにした。慢性膵炎モデルでは膵前癌病変における免疫組織学的な検討を、代表的な細胞外マトリックスの基質であるコラーゲンや活性化膵星細胞のマーカーであるα-SMAを用いて解析した。また、これらの膵癌ハイリスク患者の疑似的モデルである肥満モデルや膵炎モデルの腫瘍や前癌病変周囲組織由来の膵星細胞の樹立を多数行い、現在も樹立を続けている。 ヒト膵癌切除症例において術前に施行するERCP検査で得られた膵液よりエクソゾームの抽出法を確立した。さらに、膵液中のエクソゾームよりRNAを抽出しmiR21、miR155の発現解析において、膵癌ハイリスク因子である慢性膵炎症例と比較して有意に発現が高く、さらに血清CA19-9や膵液細胞診と比較しても高い膵癌診断能である結果を得られ、エクソゾームが膵癌早期診断の新たなバイオマーカーになり得る可能性を見出した。 しかし、初代培養した膵星細胞の分泌するエクソゾームの抽出や網羅的な解析は行えていない。これまでの研究成果は、膵癌危険因子ごとの膵癌前癌病周囲に存在する間質由来のエクソゾームに着目した新規バイオマーカーの確立につながるものであり、おおむね順調に進展している
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌自然発生遺伝子改変モデルマウスを用いて作製した、膵癌ハイリスク患者の疑似的モデルである肥満、膵炎モデルより、腫瘍や前癌病変周囲に存在する間質内の膵星細胞の樹立をさらに継続して行う。樹立した膵星細胞の培養上清中からエクソゾームを抽出する。膵前癌病変の周囲間質由来のエクソゾームの網羅的な解析を行い、早期診断バイオマーカーとして有望なタンパクやRNAを同定する。 これまでの研究期間において、ERCP検査下に採取した膵液からのエクソゾーム抽出法を確立したが、より簡便で低侵襲な手段として十二指腸液や血液からのエクソゾーム抽出を試みる。 エクソゾームの網羅的な解析により有望なタンパクやマイクロRNAを同定し、候補となる因子の膵癌手術症例における血液や膵液、十二指腸液での発現解析を行う。さらに、膵切除標本の免疫組織化学染色による発現解析を行い、バイオマーカーとしての有効性を評価する。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材、受託解析などに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)