2016 Fiscal Year Research-status Report
明細胞腺癌におけるHIF-1の非機能化と副作用軽減を目的とした新規抗腫瘍薬の開発
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16K11157
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮澤 昌樹 東海大学, 医学部, 特定研究員 (30624572)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シリビニン / 卵巣明細胞癌 / HIF-1 / 抗腫瘍効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】今回我々は、新規HIF-1阻害薬候補として卵巣癌におけるシリビニンのHIF-1の抑制効果について検討した。 【材料・方法】各婦人科癌細胞株(子宮頚部腺扁平上皮癌HeLa、卵巣明細胞癌HAC-2、OVISE、RMG-1、卵巣漿液性癌C13、2008)の計6種にシリビニン0, 500μLを培地投与し、低酸素ならびに常酸素下にて0、4時間培養した。その後、回収したタンパクを用いて、HIF-1 Alpha Cell Based ELISA Kit (CBA-281, CELL BIOLABS)によりHIF-1α発現量の変化について解析した。 【成績】RMG-1、2008においては非投与群に比して投与群において有意にHIF-1αの発現抑制を認めた。また、HeLa、HAC-2、OVISEでは低酸素処理群でのみHIF-1αの抑制を認めた。一方でC13では有意差は認めないものの、他の細胞同様にHIF-1αの発現の減少傾向を認めた。 【結論】今回の検討から、いずれの細胞においてもシリビニンのHIF-1α抑制効果が認められた。これまでにシリビニンは小児急性リンパ芽球性白血病において化学療法による肝臓毒性の緩和ならびに自身に抗腫瘍効果を認めることも報告されてきていることから、卵巣癌においても従来のレジメンに容易に追加可能でメンテナンス療法に適した新たな抗腫瘍薬になることが期待された。一方でシリビニンの作用機序については、プロリン水酸化酵素-2の発現を増加させて、HIF-1αの蓄積を阻害することが報告されており、今後はさらにHIF-1の阻害機序の解明ならびにin vivoにおけるシリビニンの抗腫瘍効果について引き続き検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までにHDACsの発現プロファイルの解析に併せて先行して、HIF-1阻害物質候補であるシリビニン(シリマリン)のHIF-1抑制効果について検討を行ってる。これは、HDAC阻害剤に比してシリビニンには有害事象発現率が低く、HIF-1抑制効果が認められれば速やかに治療効果について検討したいこと、さらには、本分野において、シリビニンについて検討されている報告が皆無であることから、H29年に行う予定であったシリビニンのHIF-1抑制効果を先駆的に進めている。一方でH28年に計画していたHDACsの発現プロファイルについても既にHDAC7の発現解析を終了していることから、他のHDACsについてもなるべく早い段階でプロファイルを終了させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
シリビニンはオオアザミ種子抽出物の主要な活性成分であり、近年、HIF-1の発現抑制を通じた抗腫瘍効果があることが報告されてきている。これまでにシリビニンは、ヒト子宮頚癌細胞株と肝細胞癌細胞株において、HIF-1とmTOR/p70S6K/4E-BP1シグナル伝達系を阻害することが報告されている(Oncogene 28:313-324, 2009)。今回HIF-1の阻害薬候補として、シリビニンに着目した理由としては、副作用の軽減が挙げられる。シリビニンは、ドイツで肝炎や肝硬変の治療に30年も前から「レガロン」の名称で使用し続けられていること、さらに重篤な副作用がないこと、本邦においても肝機能保護成分としてサプリメントでの販売がされていることから、HIF-1阻害薬として開発した場合の副作用発現リスクは他の分子標的治療薬よりも低いことが推察される。併せて、婦人科領域では一般的に多剤併用による抗癌剤治療を行うが、その際の肝障害軽減にも寄与する可能性を秘めていることから、とりわけ術後化学療法の多い卵巣癌治療においてはその効果が期待される。これまでに婦人科領域を含めた腫瘍学分野では、未だシリビニンの抗腫瘍効果については殆ど報告がないことから、我々は、シリビニンを用い、腫瘍選択的にHIF-1αの核移行ならびにHIF-1の活性化を抑制し、従来のHIF-1阻害薬に比して大幅に副作用を軽減した薬剤を開発することを目的に研究を展開していく。
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