2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢性難聴になりにくいマウスを用いた感音難聴発症機序の解明と予防法の開発
Project/Area Number |
16K11170
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 淳 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80735895)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 仁 東北大学, 医学系研究科, 講師 (60419893)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Fabp7 / ミトコンドリア / 酸化ストレス / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生仔アストロサイト初代培養細胞を使用し、Fabp7の欠損によりFoxO3aの下流にある抗酸化物質やアポトーシス制御因子の発現に変化が生じるかを、定量RT-PCR法を用いて検証した。代表的なFoxO3aの下流因子である、Sod2やCatalase、BCL2-like11に有意な変化を認めなかった。また、長寿遺伝子とされるサーチュイン遺伝子(Sirt3)についても検討を行ったが、有意な変化を認めなかった。mRNAのみならず、タンパクレベルでの変化を検討すべきと考えられる結果であった。 新生仔Fabp7 KOマウス由来のアストロサイト初代培養細胞は、野生型と比較し抗酸化能が高いという予備的データがあったため、Fabp7の欠損によりミトコンドリア機能が変化するかを、酸素消費速度(OCR)を測定して評価した。Fabp7 KOマウス由来のアストロサイト初代培養細胞では基礎呼吸およびATP産生が有意に減少する一方、最大呼吸は変化しないという結果であった。この結果から、Fabp7の欠損によってミトコンドリアが潜在能力を失うことなくエネルギー産生を低下させた状態になっていることが示唆された。 成体マウスを用いた実験については、騒音曝露装置の条件検討を行った。更に、蝸牛のホールマウント及び免疫組織化学を行うために、器機等の条件検討を行った。 特殊なアデノ随伴ウイルスを用いて、蝸牛の各構成細胞(特に内有毛細胞)に遺伝子を高率に導入する方法を研究協力者と確立したので、当施設での実験系の立ち上げを行った。Fabp7が発現するラセン神経節の支持細胞にも高率に遺伝子が導入できるため、本研究の遂行・発展に有用な技術と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
留学先での実験は極めて繊細な評価系(電気生理、免疫組織化学)を用いていたため、当施設で再現することが難しく、成体マウスを用いた実験の進捗が遅れている。 新生仔アストロサイト初代培養細胞は比較的順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在予備的な結果を得ている、Fabp7 KOマウスおよび野生型マウス新生仔由来のアストロサイト初代培養細胞を用いた、過酸化水素添加による酸化ストレス負荷実験を行い、抗酸化能を検討する。有意な差を認めた場合、過酸化水素添加後の遺伝子発現の変化(特に抗酸化酵素)を定量PCRおよびウエスタンブロット法で確認する。これらの実験により、Fabp7欠損で生じるミトコンドリア機能の変化を反映する遺伝子変化を明らかにしたい。 生体を用いた実験では、Fabp7 KOマウスおよび野生型マウスの蝸牛を用いたメタボローム解析を行い、代謝系の変化および神経保護作用のあるPUFA代謝物の変化を確認したい。 特殊なアデノ随伴ウイルスを用いて、蝸牛の各構成細胞(特に内有毛細胞)に遺伝子を高率に導入する方法を確立したので、Fabp7やその関連遺伝子を用いた遺伝子治療に繋がる研究に発展させていきたい。
|
Causes of Carryover |
研究代表者の留学が予定よりも延長したため、実験全体の進捗に遅れがあった。また、留学の延長に伴い、外国旅費の出費を抑えることができた。成体実験に関し、電気生理・免疫組織化学実験の条件設定が思ったように進まなかったため、予定していた試薬・機材の購入を次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に必要な試薬・機材(遺伝子導入に必要な手術機材や画像処置用のパソコン、免疫組織化学に用いる抗体など)を購入の予定である。28年度に行わなかった研究打ち合わせ(フロリダ大学)は、29年度の国際学会(ARO、サンディエゴ)の際に代わりに行う予定である。
|