2016 Fiscal Year Research-status Report
温度応答性培養皿を利用した真珠腫上皮シートの作製と真珠腫の病態解明
Project/Area Number |
16K11195
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
田中 康広 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40266648)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生医学 / 細胞・組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
真珠腫性中耳炎の成因ならびに病態を解明するため、温度応答性培養皿を利用して真珠腫上皮細胞を三次元培養させ、真珠腫上皮シートの作製を目的に研究を行った。また同時に正常なケラチノサイトを培養し、粘膜組織シートと重合させて人工鼓膜の作製を試みた。具体的に真珠腫性中耳炎の術中検体から真珠腫上皮ならびに正常な外耳道皮膚の一部を採取し、真珠腫上皮細胞と外耳道皮膚のケラチノサイトを分離して初代培養を行った。その後、ケラチノサイトは温度応答性培養皿上で重層化させ、鼓膜上皮層にあたる鼓膜上皮シートを作製した。一方、真珠腫上皮細胞に関しても同様の手法で真珠腫上皮シートの作製を試みた。鼓膜上皮シートに関してはKi-67の発現様式からは正常皮膚と同様な増殖能を有し、caspase-14の発現からは正常な分化であることを確認した。さらに、電子顕微鏡下での観察では基底板の存在や顆粒層におけるtight junctionの存在より、正常な鼓膜上皮層と類似した構造を確認した。真珠腫上皮シートに関しては元来より細菌感染性疾患であるため、細菌や真菌によるコンタミネーションの問題があり、現在作製に難渋している。 人工鼓膜の作製に使用する中耳粘膜シートに関しては術中に鼓室内より同時に採取した中耳粘膜を用いた。採取した中耳粘膜をin vitroにて粘膜上皮細胞とfibroblastに分離培養し、これらの培養細胞を用いて単層の粘膜上皮ならびにコラーゲン内にfibroblastを混入させた粘膜下組織を作製し、上皮層および粘膜下層の2層からなる人工中耳粘膜シートを作製した。電子顕微鏡による観察では、若干繊毛が減少するものの正常中耳粘膜とほぼ同様な組織構造が観察された。そのため今後は粘膜上皮シートと中耳粘膜シートがECMを介し、表裏一体となるように融合させ、三次元人工鼓膜の作製を試みることを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
真珠腫性中耳炎は耳漏を反復する疾患として知られており、細菌または真菌の感染を伴うことの多い疾患である。そのため初代培養の段階で細菌や真菌のコンタミネーションが起こりやすく、培養の際に使用する抗菌薬や他の培養液の構成成分の調整に苦慮している。実際に培養の際にコンタミネーションを起こすことが多く、研究が停滞する原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 細胞の初代培養の際における細菌や真菌によるコンタミネーションの問題を早期に解決し、真珠腫上皮シートの作製を順次進めていく。また鼓膜上皮シートと中耳粘膜シートの重合に関する技術的な問題を解決し、次年度の研究につなげるよう努力する。
(次年度の研究費の使用計画) 真珠腫上皮シートおよび人工鼓膜を作製するうえで必要な細胞培養にかかる材料費、免疫組織学的ならびに分子細胞学的手法にかかる試薬などを消耗品費として使用する。また本研究に関連する研究の情報収集や本研究の成果を研究会や学会等にて発表する目的で旅費として使用する。また同様に海外論文へ投稿するため論文投稿費にも使用する予定である。
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Causes of Carryover |
実験に使用する抗体や試薬を購入するには本年度分の予算では不足するため、次年度分として購入するため、少ない残金を翌年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画に則って研究に必要な抗体や試薬、細胞培養などにかかる消耗品費として使用することを計画している。
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