2016 Fiscal Year Research-status Report
脱分化脂肪細胞による組織増量と耳管組織リモデリング―耳管障害の新治療戦略―
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16K11199
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大島 猛史 日本大学, 医学部, 教授 (40241608)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 耳管開放症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱分化脂肪細胞(DFAT)は遺伝子操作やウイルスベクターを用いない簡便な方法で短期間に大量調整が可能であり、ドナー年齢や基礎疾患を問わずに調整でき、がん化する可能性も低く安全性が高いことから、再生医療用ドナー細胞として早期の臨床応用が期待されている。すでに、重度熱傷、難治性腹圧性尿失禁、難治性骨折などに対する細胞治療、GVHD 予防などの研究が進められている。DFATはiPS細胞と比較してコストが安く、今後の臨床応用を考慮すると医療経済的に優位な再生医療資源であるといえる。 本研究はDFATを耳管粘膜下に移植することによりその組織増量効果および組織修復、リモデリング作用を利用した耳管閉鎖障害の治療法の確立をめざし、開始された。 研究計画は、モデル動物の作製、DFATの調整、DFATの移植およびその効果判定からなる。これまで耳管閉鎖障害については適切なモデル動物が存在しなかった。そのため、モデル動物の確立から行うこととなったが、本研究年度ではそれに成功し、8個体の耳管閉鎖障害モデル動物を保有することができた。ラットDFATの培養にも成功しているため、これから耳管組織への移植の段階に入る。 初年度の研究の成果は、これまで適切なモデル動物のなかった耳管閉鎖障害について、疾患モデルを確立することができたことである。今後は当初の計画にのっとり、そのモデルを用いて、DFAT移植による実験介入により閉鎖障害をどのように改変できるか、生理学的、および形態学的手法を駆使して検証していくことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験動物として、ラットを用いた。まず、耳管閉鎖障害モデルの確立を目指した。文献的には脱水モデルなどがあるが、より安定したモデルを構築するために耳管関連筋の支配神経である三叉神経切断による筋萎縮、そして耳管閉鎖圧の減少という耳管閉鎖障害モデルの作製をすることとした。頸部からアプローチして三叉神経切断を行った。三叉神経切断は侵襲の高い動物手術であったが、生存率が向上し安定的にモデル作製が可能となった。耳管閉鎖障害については鼓膜切開を行い受動的耳管開大圧(POP)を測定することにより手技の成否を判定することとした。術後3カ月の時点でPOPの有意な低下を認め、耳管閉鎖障害モデルとしての妥当性を証明することができた。さらに動物用CT装置による画像解析も試みたが、解像度が低く十分な解析はできなかった。現在、8個体の耳管閉鎖障害モデル動物を保有することができている。 ラットDFATは日本大学医学部細胞再生・移植医学分野の協力を得てすでに培養に成功している。 当初は、初年度にDFATの移植まで手掛ける予定であったが、モデル動物の作製に予想以上に時間を要したためDFATの移植は次年度へと持ち越されることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.三叉神経切断による耳管閉鎖障害モデル動物については、その必要な個体数を増やす。同様のモデル動物作製に精通した研究者を新たに研究に参画させることにより、モデル動物作製の効率化を行う。 2.耳管機能についてはPOPの測定を行っているが、さらに画像解析についても改良を試み、モデル動物での耳管の変化を他覚的に検証できるようにする。 3.ラットの耳管咽頭口は経口腔的に直視することができない。細径内視鏡を用いることにより耳管組織へのDFATの移植法を確立する。 4.すでに培養に成功したDFATの耳管組織への生着率、生着状態を考慮し、注入時の分化誘導について検討を進める。 5.本研究はモデル動物での結果であり、直ちに臨床に直結しないという限界がある。そのため、並行して臨床データの蓄積、解析を行い、今後も検証していく。
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Causes of Carryover |
進捗状況に記載したとおり、本年度はモデル動物の確立に時間を費やすこととなり、DFAT移植の段階に進むことができなかった。そのため、DFAT移植に関する実験費用が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでにモデル動物は確立することができているため、次年度はすみやかにDFAT移植に移行できると考えている。初年度に行う予定であった実験は平成29年度に行い、同時に平成29年度に予定されている実験も進行していく。
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