2017 Fiscal Year Research-status Report
油層動態に基づく涙液層の形成・破壊の分子メカニズムの解明とその臨床応用
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16K11269
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
横井 則彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60191491)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドライアイ / 涙液層 / 涙液層破壊パターン / 涙液減少 / 水濡れ性低下 / 蒸発亢進 / 気泡法 / MUC16 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究者との密な議論を経て、これまでに見出した涙液層の破壊パターン(area break, line break, spot break, dimple break, random break)が涙液減少型ドライアイ(area break:重症例, line break:中等症まで)、水濡れ性低下型ドライアイ(spot break, dimple break)、蒸発亢進型ドライアイ(random break)の破壊パターンに相当することが分かったが、これに加えて、line break が急速拡大する涙液層の破壊パターンが水濡れ性低下型ドライアイに相当する可能性、および、dimple breakを伴い、角膜において部分的なarea breakを示す涙液層の破壊パターン(partial area break)が存在することが明らかになり、これらを含めると、ドライアイのサブタイプ分類が涙液層の破壊パターンで全て可能になることが明らかになってきた。また、ドライアイのサブタイプでは、涙液減少型ドライアイのみ瞬目時の摩擦亢進が病態として大きく関与することが明らかになった。共同研究者との基礎研究では、重層化した培養角膜上皮細胞に好中球エラスターゼを作用させて、膜型ムチン(MUC16)をsheddingさせ、上皮細胞表面の接触角を気泡法で評価すると、上皮表面の水濡れ性が低下することから、MUC16が上皮の水濡れ性を維持していること、および、ジクアホソルナトリウムがそれを改善することが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドライアイの新しい治療コンセプトとして眼表面の層別治療(TFOT: tear film oriented therapy)が提唱されているが、このコンセプトでは、成分補充で涙液層の安定性を高め、ドライアイを治療しようとする。しかし、このコンセプトが成り立つためには、涙液層の破壊を引き起こしている眼表面の不足成分を看破する方法[眼表面の層別診断(TFOD: tear film oriented diagnosis)]が必須であり、その方法が模索されていたが、涙液層の破壊パターン分類が役立つことが明らかになってきた。今年度の目標は、TFODのための涙液層の破壊パターンの全容を解明することであり、今年度の研究で、その全容が示され、目標の1つを達成できたと考えている。一方、角膜上皮表面の水濡れ性を維持している分子として、MUC16が想定されているが、共同研究者との基礎研究で、MUC16と接触角との関係(角膜上皮表面にMUC16の発現を欠くと接触角が大きくなり、角膜表面の水濡れ性が悪くなる)が明確にされ、水濡れ性低下型ドライアイという新しいドライアイのサブタイプの臨床的意義やそれを治療するためのジクアホソルナトリウムの有効性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
涙液層の破壊パターンの全容が明らかにされ、それらを用いて、ドライアイのサブタイプ分類(涙液減少型、水濡れ性低下型、蒸発亢進型)を行うことができ、さらに眼表面の層別診断(TFOT)につなげることができることが分かってきたため、今後の研究としては、トポグラフィーやインターフェロメトリーの手法を用いて、涙液層の破壊パターンを自動診断する手法の開発をめざす。これまでのトポグラフィーの手法の涙液層への応用は、涙液表面の不整性を評価したり、涙液層の破壊時間を測定するものであり、涙液層の破壊パターンの評価につなげるものではなかった。従って、角膜上の涙液層の表面の不整性の評価を行える新しい手法の開発に取組み、その不整性と涙液層の破壊パターンをつなげて、ドライアイのサブタイプ分類に結び付けたいと考えている。また、ソフトコンタクトレンズ表面の涙液層の破壊パターンの観察から、ソフトコンタクトレンズ表面は、角膜表面に比べて、水濡れ性が大きく低下している(接触角が大きい)ことが推察されるため、共同研究者との共同研究を通じて、ソフトコンタクトレンズ表面の接触角や摩擦係数の測定を行い、ソフトコンタクトレンズ表面と角膜表面の違いやソフトコンタクトレンズ表面の水濡れ性のin vivo測定法の開発にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成29年度は、既存の検査機器を用いてドライアイに対して検査を行い、そのデータ解析を主体に臨床研究を進めたため、使用した助成金は、予定を下回った。また、角膜上皮の接触角および水濡れ性に関する研究は、共同研究者の協力のもと、ソフィア大学物理学教室の既存の計測機器を用いた研究であったため、基礎研究の必要経費も予定より下回った。平成30年度は、得られた知見をもとに、さらに研究を発展させ、研究協力者とのさらなるディスカッションも必要になると考えられるため、そのための渡航費用ならびに解析費用、学会参加費用、論文作成費用も必要になると考えられ、助成金の可能な範囲の全てを充填する予定である。 (使用計画) 論文作成、データ解析、国内外の発表、ソフィア大学での研究協力者とのディスカッションのための会議
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[Journal Article] TFOS DEWS II pathophysiology report.2017
Author(s)
Bron AJ, de Paiva CS, Chauhan SK, Bonini S, Gabison EE, Jain S, Knop E, Markoulli M, Ogawa Y, Perez V, Uchino Y, Yokoi N, Zoukhri D, Sullivan DA
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Journal Title
Ocul Surf
Volume: 15
Pages: 438-510
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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