2017 Fiscal Year Research-status Report
マウス双極細胞周辺受容野応答極性反転のメカニズム解析
Project/Area Number |
16K11333
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
尹 成珠 日本医科大学, 医学部, 助教 (30535430)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 網膜双極細胞 / GABAA / GABAC / NKCC1 / KCC2 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜双極細胞は受容野の応答特性からON型とOFF型に分けることができる。ON型とOFF型で見られる受容野周辺部応答は同種類のGABA受容体を介して起こると考えられるため、どのようにして網膜双極細胞受容野周辺部応答極性を反転させているのか、そのメカニズムはまだ明らかになっていない。本研究は電気生理学的手法・分子生物学的手法を用いて、ON型とOFF型双極細胞のGABA受容体各サブタイプのイオン機構とCl-トランスポーターの分布パターンを再検討し、受容野周辺部応答極性反転の機構を明らかにしようというものである。 平成28年度の網膜双極細胞のGAABAAとGABAC受容体のHCO3-に対する透過性はほとんど変わりがないこと、免疫組織化学的手法を用いたCl-トランスポーター分布には違いがあるという研究結果が出た。 平成29年度は平成28年度の研究結果を元に、Cl-トランスポーター阻害剤であるBumetanide (NKCC1阻害剤)やVU0255011(KCC2阻害剤)を投与し、ON型とOFF型双極細胞でそれぞれの逆転電位の変化を記録し比較して見た。その結果、ON型双極細胞でBumetanide によって逆転電位が脱分極から過分極に変わり、VU0255011では大きな逆転電位の変化が見られなかった。一方、OFF型双極細胞ではBumetanide によって逆転電位の変化が見られず、VU0255011で過分極から脱分極に変わった。 これらの結果から、網膜双極細胞の受容野周辺部応答極性を反転させるのは細胞内のCl-濃度であり、このような濃度差を起こすのは双極細胞のCl-トランスポーターであるNKCC1とKCC2分布の違いだと考えられる。 今後、これらの結果をまとめて、論文として投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの単離網膜双極細胞にホールセルーパッチクランプ法を適用し、Bathー application 法を用いてGABA応答を記録した。逆転電位を、細胞外液をHCO3-を含まないHEPESバッファー液と、HCO3-を含むHCO3-バッファー液の両方で測定し、この二つの溶液間でGABAAならびにGABAC受容体の逆転電位がHCO3-の有無に対してどのように変化するかを検討した。その結果、GABAAとGABAC受容体のHCO3-に対する透過性はほとんど変わりがないことが判明した。 免疫組織化学的手法を用いたGABA受容体サブタイプ並びにCl-トランスポーター分布の検討ではON型とOFF型双極細胞でCl-トランスポーターであるNKCC1とKCC2分布の違いが発現され、このようなCl-トランスポーター分布の違いがON型とOFF型双極細胞の受容野周辺部応答極性を反転に寄与している可能性が高いことがわかった。 さらに、マウスの単離網膜双極細胞にホールセルーパッチクランプ法により、ON型とOFF型双極細胞では細胞内Cl-濃度差が存在し、これはCl-トランスポーターであるNKCC1とKCC2分布の違いによるものだということが判明された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は今までの結果をまとめ、追加実験、解析、統計を行い、論文にして投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
研究設備の整え、薬品の使用により、計画より研究経費の節約になった。 出張でも事前参加登録など、出張経費も節約につながった。
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