2016 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化機能を有するヒト由来iPS細胞を用いた歯髄組織再生の具現
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16K11558
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 毅 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (90244079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 志津香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00363458)
松裏 貴史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10721037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 魚コラーゲンペプチド / 骨再生促進 / BSE |
Outline of Annual Research Achievements |
1986年に英国で初めて報告されて以来、世界的に猛威を振るい、大きな社会的問題になったBSEや口蹄疫を含む人畜共通感染症の流行により、医療薬品の原材料について再考を要する事となった。それ以来人畜共通感染症の対象でない魚類などの皮、鱗や骨から抽出したコラーゲンは安全な生体材料となるため、今後は医療分野に様々な応用の可能性を秘めている。さらにコラーゲンの水解物であるコラーゲンペプチドはコラーゲンと比較して分子量が小さいため生体内での吸収が容易である。またこのペプチドは部分的に変化を受けずに消化器官で吸収され腸管のバリアを通過でき脈管系へ移動した後、体内へ分布していくものと考えられる。 そこで魚の皮から抽出したコラーゲンをプロテアーゼ処理により低分子化した魚コラーゲンペプチド(FCP)をラットを用いた動物実験系において下顎骨の骨欠損部へ直接充填し、創傷治癒状況を観察しFCPの骨再生剤としての有用性を検討している。 その結果中間報告としては、術後1週間目では炎症性細胞浸潤はほぼ消失し、脈管系の新生が旺盛で線維芽細胞の増殖が認められた。4週目では骨欠損周辺部および深部において骨芽細胞の増殖がみられた。また欠損部入口では島状の新生骨の形成が認められた。8週目では骨性修復が進行し欠損部の閉鎖傾向が確認できた。12週目では層板骨により完全に閉鎖していた。 FCPは早期に骨欠損部の骨性修復再生を促進させることが明らかとなった。BSEなどの感染の危険性がなく安価であるFCPは、骨再生剤として今後臨床応用の可能性を十分有する有用な材料であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最近多能性幹細胞を浮遊培養することで三次元的な立体構造を有する細胞凝集塊、すなわち胚様体形成させることで各種組織幹細胞へ分化可能となる誘導法(胚様体形成法)を形成させる試みが報告されており(Nat Neurosci 8:288-96,2005)、レチノイン酸(RA)添加によるES細胞の分化誘導に準じて、大学既設のセルソーターを用いて細胞表面マーカーとしてCD105陽性かつCD31陰性の分画となる細胞を分取し、幹細胞マーカーであるCD29、CD44、CD73およびCD90が陽性となることをフローサイトメトリック解析し、血管新生能および神経再生能を有する歯髄幹細胞であることを確認できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のiPS細胞を利用した移植療法を展開するにあたり、細胞間接着分子E-カドヘリンのモデル分子である固定型E-cad-Fcキメラタンパク質を用いた単一細胞レベルで分散させ、未分化状態を維持させながら増殖させ、iPS細胞の均質化ならびに大量増幅を目指すことになる。次いでSDF-1-CXCR4(リガンド-受容体ペア)を利用した歯髄幹細胞遊走分離法を用い、硬組織誘導培養系へのFCP添加により象牙芽細胞への分化誘導促進化を確認・評価する。さらにFish collagen由来多孔性担体を用い三次元組織培養を行った細胞-坦体複合体として、前臨床試験としての動物組織内への細胞移植での再生効果を検証し、最終的にはGMP準拠の加工施設内でのヒト歯髄幹細胞の品質管理保証体制を構築し、ヒトへの細胞移植療法の臨床試験を目標に設定する。
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Causes of Carryover |
予定していた物品が充足したため、一部残存した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度における研究実施に合わせて使用予定である。
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