2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11562
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
門倉 弘志 明海大学, 歯学部, 講師 (60343456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 象牙質形成 / Ectodin / Wnt シグナル / 象牙芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(目的)歯髄組織の創傷治癒や修復象牙質形成のメカニズムを研究、解明することは新たな直接覆髄法や断髄法など歯髄保存治療の発展に役立ち、国民のQOLに大きく貢献すると考えられる。歯の発生過程ではWntシグナルが重要な役割を果たしているが象牙質形成におけるその作用の詳細は不明である。今回、ectodinならびにwntシグナルが象牙質形成にどのように関わるかを調べる目的でラット培養歯髄細胞に対しectodinをknock downして実験をおこなった。 (方法)8週齢のラットの切歯の歯髄から酵素分離法で初代歯髄細胞を分離し実験に用いた。Ectodinの作用を調べるためにsiRNAを発現ベクターに導入しectodinのknock down (KD群)を行い、空ベクターを導入した対照群細胞(Cont群)と比較検討した。これらの細胞を20日間培養し、形態学的に石灰化象牙質形成を調べるために、ALP/Von kossa染色を行った。また、ectodin, DSPP, BGP, wnt10, axin2のmRNAの発現を調べるためにリアルタイムPCRを行い解析した。 (結果と考察)KD群におけるectodin mRNAの発現はCont群に比較して有意に減少し、knock down 効果が確認された。KD群では象牙質石灰化結節の形成が抑制されDSPP, BGPの発現もCont群に比較して有意に抑制された。これに伴いwnt10aの発現も抑制されたがaxin2の発現は変化が認められなかった。これらの所見からectodinの発現を抑制すると象牙質形成が抑制され、このメカニズムにはwnt10a以外にも他のwntシグナルが関与することが示唆された。これらの結果からectodinはwntシグナルに作用し象牙質形成を制御することが示唆された。 平成28年第144回日本歯科保存学会春季学術大会にて本発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroでの象牙質形成過程を再現できる歯髄細胞の培養系が安定的に機能しており、象牙芽細胞様細胞分化に対するWntとectodinの作用を調べることがおおむねできている。 今研究の研究目標に掲げたcanonical Wntシグナル経路の構成因子であるβ‐cateninならびにlef1の発現も本実験の歯髄培養細胞で確認できており、ectodinのknockdownの実験にも着手できている。Knockdownの実験ではリアルタイムPCRの結果よりectodinの発現が抑制されていることが確認され、その結果、象牙芽細胞様細胞の分化が抑制されるという結果がもたらされた。これらのことから本研究はおおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLiClを歯髄培養細胞に作用させ、canonical Wnt経路の活性化を行った場合の歯髄細胞の象牙芽細胞様細胞分化と象牙質形成について観察を行う。培地へのLiClの添加濃度について希釈条件を決定し、歯髄細胞の培養を行う予定である。解析には象牙芽細胞の各種分化マーカーの発現を調べる。象牙芽細胞の各種分化マーカーはDSPP, BGP, type1 collagen, ALPを指標とし、その発現をリアルタイムPCRで調べる。をまた、canonical Wnt経路の活性時のectodinの発現について観察し、ネガティブフィードバック機構についての解析を行う。この時、LiClの濃度変化に対しEctodin発現がどのように変化するかを解析する。さらに、β-cateninのknockdown状態における DSPP, BGP, type1 collagen, ALPのmRNAの発現を解析し、象牙芽細胞様細胞分化におよぼすcanonical wnt経路の作用を解析する。
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