2016 Fiscal Year Research-status Report
CXCL12を利用した創傷治癒促進能をもつ再生医療材料の開発
Project/Area Number |
16K11635
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
三浦 直 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (10266570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志澤 泰彦 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (30413131)
三宅 菜穂子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (40276978) [Withdrawn]
田辺 耕士 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (80638156) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オッセオインテグレーション / インプラント / チタン / 表面改質 / サイトカイン / 微量タンパクの検出 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科インプラント治療におけるOsseointegrationのメカニズムを解明するというゴールに向けて、まず血液を介した創傷治癒に関わる因子に着目した。チタンインプラントの表面汚染によって発現量に変動をもたらすサイトカインの検出を行った。 健常ボランティアから採取した静脈血を、様々な表面処理を実施したチタンディスク上で37℃5% CO2条件下で培養開始し、経時的に一定量サンプリングしRNAを抽出した。チタンの表面処理に関しては、物理的処理としてUV照射処理、Plasma処理、化学的処理として次亜塩素酸ナトリウムNaClO(10%)またはNaOH(0.05M)またはトリクロロエチレンClCH=CCl2による洗浄処理を検討した。検討したサイトカイン遺伝子は血液反応に関わるものを中心に11種類をターゲットとしてRNA検出を行った。その結果、検出された遺伝子はTLR4などの炎症性サイトカイン、骨髄単球系のタンパク、CXCL12のレセプターであるCXCR4であった。供試した条件下ではCXCL12は検出できなかった。 また、検出された遺伝子に対し、培養開始からの発現量の経時変化を調べたところ、TLR4が血液培養開始から1時間後に表面処理を実施しないコントロールと比較して、物理的および化学的な表面処理を実施したチタンにおいて有意に発現量が上昇した(p<0.01)。CD14については、培養1時間ごと4時間後にコントロールと比較して、化学的表面処理を実施したチタンにおいて有意に発現量が上昇した(p<0.05)。CXCR4については、同様に培養1時間後で物理学的表面処理を実施したチタンにおいて有意に発現量が上昇し、8時間後でも発現量が上昇傾向を示した(p<0.01)。以上よりチタンの表面処理の違いによって、血液中の遺伝子の発現量が異なることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度研究計画・方法には5つの項目を掲げたが、ほぼすべての項目について検討ができたことで、おおむね順調に進展していると判断した。一部実験を実施したが、期待通りの結果を得られなかった部分については、予想はしていたがやはり一筋縄ではいかないことを改めて実感させられた。 具体的には、創傷治癒に関係する血液反応において、サイトカインの検出はなかなか難しいものであった。例えば反応の過程で発現するタイミングを正確に見極めることが難しいし、発現量に変化があったとしても、それは非常に僅かなもので、それを可視化して検出することは現在の科学の技術ではなかなか難しいと言える。チタンの表面性状の違いによって、血液が何らかの刺激を受けてサイトカインなどのタンパクの発現に変動を誘導することが分かったが、これも非常に微量の変動であり、検出可能となったものでも非常にレベルの低いもので、RNAレベルにしてpicoレベルで漸く検出に至るというものであった。そのためタンパクレベルで検出を試みたものの、ELISAによる抗原抗体反応を利用した方法では検出不可能であった。また、当初最も注目していたケモカインであるCXCL12の検出までには今のところ至っておらず、来年度以降の課題も提起された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の欄に前記したが、血液反応の中で発現量の変動が非常に微量のサイトカインが多かった。微量のサイトカイン、ケモカインの検出に固執して、検出実験による時間の浪費、および研究費の浪費を繰り返し、最終的に目的のサイトカインの検出だけで、研究期間を終えることになり兼ねない。検出以外にも今年度以降、実験を計画しており、そのために一定量の試料を用意する必要がある。試薬として購入すると非常に高価なものでありそこで、研究計画書にはなかった新たな実験を来年度に組み込む予定を立てた。今年度試みて検出に至らなかったCXCL12に相当するDNA配列を報告されているものを元に合成し、転写ベクターに導入し、宿主大腸菌に発現させるシステムを構築する計画である。CXCL12の組み換えタンパクを大量発現し、今後のサイトカインを使用した種々の実験に備える予定である。具体的には2本鎖linear DNAの人工合成を実施し、それをpPAL7 vectorに挿入、E.coli 株で発現させ、大腸菌の発現した目的タンパクから組み換え実験で付加した余計な遺伝子領域を脱離して精製する。生成した目的タンパクが本来の正しい活性をもつことも検討する必要があるのでこれも計画中である。
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Causes of Carryover |
前述したように、若干の実験内容が変更になったため、その新たな実験に不可欠な試薬を購入する必要が生じた。そのため、当初購入予定だったパソコンの購入を1台分控え、来年度以降に予算を回さざるを得なくなった。それに伴い、パソコン1台にインストールするOfficeソフトも1組購入しなかった。また、統計解析ソフトも、来年度以降の購入にしたため、全体的に今年度予算に余剰が生じ、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の理由により、今年度に購入を控えた物品を次年度に購入する予定である。
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