2017 Fiscal Year Research-status Report
カテプシンK阻害薬とPTH併用による炎症性骨吸収抑制効果の検討
Project/Area Number |
16K11647
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高橋 真理子 東京医科歯科大学, 歯学部, 技術職員 (90334440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 和広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40272603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インプラント / 炎症抑制薬 / 骨吸収抑制薬 / 骨形成促進薬 / PTH |
Outline of Annual Research Achievements |
全身の健康維持を考慮する上で口腔機能の維持は重要な役割を担っており、歯や歯槽骨の喪失が及ぼす影響はとても大きい。歯科治療においてインプラント治療が急速に普及し、多くの患者が恩恵を受けている一方、埋入後のメンテナンスによってはインプラント周囲に歯周病と同じような病変が生じる。 そこで、炎症抑制作用と骨吸収抑制作用を両方合わせ持つカテプシンK阻害薬に着目し、炎症によって病態が進行するインプラント周囲病変の病態改善に効果を示すのではないかと仮説をたてた。さらに、骨形成促進薬PTH(parathyroid hormone)の併用によってより効果的に病態改善がもたらされると考え、インプラント周囲炎モデルマウスに及ぼす効果の検討を始めた。 本研究で着目していたカテプシンK阻害薬odanacatibは臨床治験が進められていたが、2016年秋に開発が断念された。そこで、新たな薬剤候補の探索が必要となり、同様の炎症抑制作用と骨吸収抑制作用を併せ持つと見込まれる新たな候補物質の検討を進めてきた。一方、組織学的解析を行うにはインプラント体を含んだ非脱灰標本作成法の確立が必要であり、共焦点レーザー顕微鏡における細胞レベルでの観察を目指して研磨標本の作成に取り組んできた。インプラント体を含んだ標本は凍結薄切法では組織切片を作成することができないため、ビラヌエバ骨染色により前染色したインプラント体を含む標本を樹脂包埋し、ゼーゲミクロトームで切り出した後に研磨を行う手法にて非脱灰研磨標本作成を行った。共焦点レーザー顕微鏡に適した標本を作成するためには厚さが均一となる研磨精度が必要となり手技手法の検討に時間を要したが、観察だけでなくオートタイリングが可能な標本を得られてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究で着目していたカテプシンK阻害薬odanacatibの開発中止に伴い、新たな薬剤候補の検討が課題となっている。Odanacatibは炎症抑制作用と骨吸収抑制作用を併せ持つ物質であったが、骨形成促進作用も理由は不明であったが併せ持っている報告がなされていた。そこで、我々は特に炎症性サイトカインのTNF-αと骨吸収活性を上げるRANKLの双方に結合するペプチドのスクリーニングから骨形成促進作用を併せ持つ物質候補の探索を進めてきた。一方、インプラント体を含んだ非脱灰標本の細胞観察を目指して研磨標本の作成を行っているが、共焦点レーザー顕微鏡に適した標本にするためには研磨の精度が必要となり、手技手法の検討に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きカテプシンK阻害薬と同様に骨吸収抑制作用と炎症抑制作用だけでなく骨形成促進作用が見込まれる物質の検討を行う。具体的には大阪大と医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究によりTNF-αとRANKL双方に結合するペプチドのスクリーニングをファージディスプレイ法を用いて進めており、TNF-αとRANKL双方に結合親和性の高いペプチド候補を4つ選び、in vitroとin vivoの系で骨系細胞及び骨量増加作用に関してそれぞれ検討を行う予定である。また、PTHと併用した場合の骨形成促進作用を異所性骨石灰化モデルを用いて局所への効果をX線学的および組織学的に検証する。さらに、血清中の骨吸収・骨形成マーカーを測定し、全身への波及効果を検証する。 また、ビラヌエバ骨染色で前染色したインプラント体埋入標本の細胞レベルでの観察を目指し、共焦点レーザー顕微鏡に適した非脱灰研磨標本作成の確立を行った上で骨形態計測法による評価を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)当初計画していた研究計画の推進が遅れ、方策検討等によって当該年度使用額が予定よりも少なくなったため。 (使用計画)今回生じた次年度使用額は、遅れている研究計画をより推進させるべく試薬購入の経費に充てる予定である。
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