2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11679
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡本 圭一郎 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (50382338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 痛み / 侵害受容 / 咬筋 / 口腔顔面痛 / ストレス / 三叉神経 / ウツ / 顎関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
繰り返し情動ストレス状態における咬筋の痛みへの影響について検討を開始した。初年度のゴールは咬筋への痛み刺激に対する中枢神経組織(三叉神経脊髄路核尾側亜核)での侵害受容(痛み)応答の変化を検討することである。初年度では以下の結果が得られた。繰り返し情動ストレス処置を行なうと1) 三叉神経脊髄路核尾側亜核領域内の各部位(ViVc, mid-Vc, dPa5など)で、疼痛応答の増大が見られた。そして2) 繰り返し情動ストレス処置を加えた同側のみならず反対側でも見られた。つまり繰り返し情動ストレスは三叉神経脊髄路核尾側亜核全体の興奮性を増大させていることが明らかになった。我々は本課題研究に並行し、顎関節の持続性炎症性疼痛モデルを用い、咬筋の痛みの応答が両側性に増大することも明らかにした。本モデルでは疼痛関連行動が増大し、三叉神経脊髄路核尾側亜核領域では侵害受容応答のマーカーとされるリン酸化ERKやFosタンパクの発現が有意に増加していた (Exp Brain Res 2017に公表)。これらの結果から三叉神経脊髄路核尾側亜核は、情動ストレスや局所炎症という病的状態における侵害受容応答の増大を支配する重要な部位であることが明らかになった。さらに繰り返し情動ストレスモデルに対し、抗ウツ薬(SSRI)または非ステロイド系消炎鎮痛剤の投与による抗ストレス効果が咬筋の痛みの反応のいかなる影響を与えるかを検討した。結果、 SSRIまたはNSAIDSの投与は抗ストレス作用を示しただけでなく、咬筋への痛み刺激によって生じる三叉神経脊髄路核尾側亜核の興奮性を抑制させることが明らかになった。特にNSAIDSによる抗ストレス効果と、その結果としてのストレス誘発性疼痛の制御は今後、臨床的意義は高いものと思われることから、研究の発展が期待される。これらの所見は既に複数の学会などで公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰り返し情動ストレス処置によって、咬筋の侵害受容応答の有意な増大が確認できたこと、抗ウツ薬(SSRI)の投与によるストレス誘発性の侵害受容応答の増大が抑制されたこと、抗ウツ薬による侵害受容応答の抑制効果はストレス処置群でしか見られないこと(非ストレス群ではSSRI効果を認めなかった)などの実験結果は、概ね当初、予想したとおりである。よっておおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
情動ストレス処置に伴う侵害受容の興奮性が三叉神経脊髄路核尾側亜核で増大すること、ならびにセロトニン系中枢機構の関与が明らかになったことから、今後はこれらの現象を支持する中枢神経機構(特に上位脳機能の関与)について検討する。具体的には研究計画に従い、PAG,RVM, NTSの役割を検討する。特にNSAIDSによる抗ストレス効果、ストレス誘発性疼痛抑制効果については、想定外の結果であった。しかしNSAIDSはSSRIに比し中枢神経作用の低い治療薬としての可能性を持つことから、抗ストレスにおけるNSAIDSの作用基盤も同時に解明する予定である。また研究初年度で得た研究結果を、日本基礎歯科医学会、日本生理学会、日本顎関節学会などで発表し、さらに今年度中の論文発表を計画している。
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Causes of Carryover |
研究遂行の過程で使用動物数を含む消耗品の使用が、実験精度の向上などにより予定を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用する楽剤(抗体)や使用する動物数の追加を予定している。
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