2018 Fiscal Year Research-status Report
歯根膜組織の再生・恒常性維持マシナリーに関与する新機能の探索および応用法の開発
Project/Area Number |
16K11804
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長谷川 智一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (50274668)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30230816)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
|
Keywords | 歯根膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は乳歯の歯根膜組織に存在する歯根膜細胞の機能解析を行ってきた。血管内皮前駆細胞endothelial progenitor celsl (EPCs)および間葉系幹細胞 mesenchymal stem cells (MSCs)の遊走を誘導するstromal-cell derived factor 1α (SDF-1)を歯根膜細胞が発現することを示した。このことから歯根膜細胞は歯周組織の恒常性維持のために必要な細胞の遊走をコントロールする機構(マシナリー)を持つことが予想された。さらに歯根膜細胞のSDF-1の発現はFGF-2により抑制的に制御され、TGF-β1の投与により促進的に働くことも示した。これらの結果を合わせると、歯周疾患の再生治療のためにSDF-1の発現調節を有利に応用した方法も考えられた。 また我々は歯周病を慢性感染症によるものと考えて、炎症系のサイトカインであるIL-1、TNF α、または嫌気性菌の内毒素であるLPSを歯根膜細胞に投与して、SDF-1の発現解析を行った。しかし意外にも歯根膜細胞のSDF-1の発現にはこれらのサイトカインは関与しなかった。炎症系のサイトカインでSDF-1の発現が影響を受けていなければ、歯周病初期の治療にSDF-1発現を誘導する治療薬や、発現を持続させる治療薬の開発も有効ではないかと考えられる。初期治療の際に組織修復に有利な細胞の遊走を誘導させる戦法である。いずれにしろ、これらの炎症系のサイトカインネットワークとSDF-1発現調節機構の関係は、投与量、投与期間などの詳細な検討を加え、再解析する予定である。 さらに現在、歯の外傷や咬合性外傷、矯正力を想定した歯根膜細胞への圧迫力による影響の解析を行っている。同時に細胞への外力を想定した際に、血管の圧迫などで低酸素になると想定し、低酸素状態での解析も行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯根膜組織は歯根と歯槽骨の間に存在し、歯を支えている組織である。歯槽骨の吸収を生じ、歯を支えられなくなった状態を歯周病と考え、歯周組織の再生治療の一つとして歯根膜細胞からのアプローチでSDF-1の解析を行ってきた。これまでの研究結果から適切な動物モデルの開発によって、臨床応用のための解析が可能になると考えられる。今後の研究課題とする予定である。 さらに歯に対する外傷、咬合性外傷、矯正治療による外力などを想定して、機械的圧力(compressive force, 圧迫力)による歯根膜細胞の影響についても解析を行っている。我々は以前にも歯根膜細胞に対する伸展刺激の解析を行ってきた。その際、破骨細胞の分化を抑制するosteoprotegerin (OPG)の発現促進を報告してきた。矯正力による歯の移動の際の伸展側のモデルであったが、今回のモデルは圧迫側の解析モデルになり得ると考えている。またこれは、適切な矯正力を超えて、外力によって歯根膜組織がダメージを受けた際のモデルにもなり得ると考えている。Microarrayなどの網羅的解析法により解析予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
歯周組織の恒常性維持機構には、ひとつのサイトカインにおいても抑制的・促進的に働く機構を内包し、多数の因子が関与していると考えられた。そこで上記の研究計画に合わせてさらに以下の研究解析を行っている。 持続的矯正力や外傷による外力が歯根膜に作用した場合、局所が低酸素状態になることを想定している。また外傷により血管が損傷した場合、低酸素環境になると想定して両者相互の解析を行っている。 擬似低酸素環境下としてCoCl2を投与しての解析を行っている。これは2価のコバルトイオン、鉄のキレーターであるデスフェロキサミン(DFO)などによりHypoxia response Element (HRE)経由でHIF-1が活性化され、擬似低酸素環境が誘導されることを利用している。この擬似低酸素環境下で歯根膜細胞のSDF-1の発現が抑制されていた。そこでO2濃度0-20%まで可変可能なC O2 incubatorを使用して整合性をとろうとした結果、一致しなかった。ここにはHRE以外の低酸素環境の責任メカニズムが存在するのではないかと詳細な検討を行っている。 また解析項目として低酸素環境下で誘導される血管内皮細胞増殖因子VEGF以外に、挙動が逆になると予想される血管誘導阻止因子Chondromodulin-1を検討する予定である。また血管誘導阻止因子であり、近年歯根膜のマーカーであると報告されたTenomodurin-1 、腱・靭帯の成熟に必要なScleraxis、腱の分化に必要なMohawkの発現解析を行う予定である。 低酸素環境下での解析の報告は多いが、その多くは組織修復のマーカーとして血管再生を指標にVEGFの発現をみている。本研究では新たに歯根膜・靭帯・腱のマーカーの解析と、これらの組織には血管はほとんど存在しないことから血管新生阻止因子の発現解析を行うことで新たな知見が得られると考えている。
|
Causes of Carryover |
148円と小額であったため、次年度に繰り越した。 次年度予算は細胞培養用の試薬、共用研究機械の使用料、研究成果発表の発表費用に充当する予定である。
|
Research Products
(10 results)
-
[Journal Article] Combination of ions promotes cell migration via ERK1/2 pathway in human gingival fibroblasts2019
Author(s)
Kimiko Ueda Yamaguchi, Yuki Akazawa, Kawarabayashi Keita, Asuna Sugimoto, Hiroshi Nakagawa, miyazaki aya, Weih Falk, Kurogoushi Rika, Iwata Kokoro, Takamasa Kitamura, Yamada Aya, Tomokazu Hasegawa, Fukumoto Satoshi and Tsutomu Iwamoto
-
Journal Title
Molecular Medicine Reports
Volume: 6
Pages: 5039-5045
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-