2016 Fiscal Year Research-status Report
破骨細胞と骨芽細胞のクロストーク(骨カップリング)を標的とした新規歯周治療の開発
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16K11833
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
稲垣 裕司 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (50380019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯周病 / 骨カップリング / LPS / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / Eph受容体 / ephrin |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、in vitro実験系、すなわち破骨細胞培養系、骨芽細胞培養系および破骨細胞-骨芽細胞の共細胞培養系にLPSや炎症性サイトカインを添加して骨カップリングファクターの発現を調べることが目的であった。 1.破骨細胞の骨カップリングファクター発現に対する歯周病原因子の影響 マウス骨髄から破骨前駆細胞を採取し、M-CSFとRANKLを用いて成熟破骨細胞に分化・誘導した。この破骨細胞の培養系に歯周病原因子のLPS、炎症性サイトカインのIL-6、TNF-αを添加して骨カップリングファクターのephrinA2、EphA2、S1P1およびSPHK1のタンパク質発現レベルをウェスタンブロッティング法により調べた。その結果、破骨細胞単独ではLPS、IL-6、TNF-αの刺激によってephrinA2やEphA2の発現が上昇すること、またS1P1、SPHK1の発現も上昇することが明らかとなった。 2.骨芽細胞の骨カップリングファクター発現に対する歯周病原因子の影響 マウス大腿骨由来の骨芽細胞を用いて、上記1.同様、この骨芽細胞の培養系にLPS、IL-6、TNF-αを添加して、骨カップリングファクターのEphB4のタンパク質発現レベルをウェスタンブロッティング法により調べた。その結果、骨芽細胞単独ではLPSの刺激によってEphB4の発現が低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス骨髄由来の破骨前駆細胞から成熟破骨細胞のみを単離し、一定期間培養する方法を確立することに時間を要した。すなわち通法(過去に行ってきた方法)では成熟破骨細胞の寿命が短く、実験ごとに培養期間(成熟破骨細胞の形成に要する期間)にばらつきがあったので安定した実験を行うことが困難であった。 また同様に、破骨細胞-骨芽細胞の共培養系を確立することにも時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス由来の破骨細胞-骨芽細胞の共培養系をほぼ確立できたので、引き続き、この破骨細胞-骨芽細胞の共培養系にLPS、IL-6およびTNF-αを添加して骨カップリングファクターやその受容体の発現を網羅的に調べる。またSema4DやSema3Aなど、ターゲットの分子も順次増やしていく予定である。 またマウス株化破骨細胞であるRAW264.7細胞や、マウス株化骨芽細胞であるMC3T3-E1細胞を用いて同様の実験を行っていくとともに、LPSの受容体であるToll様受容体、ephrin、EphのshRNAを培養細胞にトランスフェクションしてこれらの遺伝子をノックダウンし、骨カップリングファクターの発現変化から詳細なメカニズムを検討する。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画より遅れており、平成28年度に購入予定していた消耗品(キットや抗体)を使用する機会がなかったので購入しなかった。また当初計上していた旅費や謝金について、本年度は学会出張を行わなかったので旅費が生じず、また大学院生への謝金も生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に破骨細胞や骨芽細胞の培養にかかわる培地、血清やその他の培養試薬、mRNAの抽出試薬、リアルタイムPCR法にかかわる試薬、ウェスタンブロッティングにかかわる試薬および検出用キット類などの消耗品を購入する。この中には平成28年度に購入予定していた消耗品も含まれる。具体的には、骨カップリングファクターに対するプライマーや抗体、培地に添加するLPSや各種炎症性サイトカインを購入する予定である。また引き続きマウスから骨髄細胞を採取して培養するので、マウスの購入および飼育に関する経費が必要である。さらに本年度は培養細胞にshRNAをトランスフェクションして遺伝子ノックダウンを行うので、トランスフェクション実験のための試薬が必要である。 また国内学会への参加を予定しているため、上記消耗品費に加え、経費として国内旅費が必要となる。
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