2016 Fiscal Year Research-status Report
流体解析を応用したダウン症児OSASの部位特定と歯科的治療モデルの構築
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16K11864
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 秀夫 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (40507125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 慎介 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (00773780)
岩崎 智憲 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (10264433)
弘中 祥司 昭和大学, 歯学部, 教授 (20333619)
山崎 要一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (30200645)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 / Down症候群 / 流体シミュレーション / 上顎側方急速拡大 / OSAS改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はDown症候群児を対象に実際の治験を行い、その結果を第33回日本障害者歯科学会学術大会にて発表し、学術大会優秀発表賞を獲得した。以下はその発表概要である。 緒言:我々はOSASを伴うDown症候群児に上気道3次元モデルから呼吸状態を再現する流体シミュレーション(CFD)を用いて通気障害部位を特定し、その部位に作用する上顎側方急速拡大(RME)で症状改善を認めた症例を経験したので報告する。患児:12歳1か月 、男児 、BMI 21.5kg/m2 経過:歯列不正を主訴に受診し、診断の結果、上顎骨劣成長と口腔周囲筋の低緊張による巨舌を認めた。また、問診より睡眠時のいびきや胡座での睡眠態癖を認めたため、睡眠呼吸障害を疑い、耳鼻咽喉科に紹介した。簡易PSG検査よりRDI(respiratory disturbance index)28.6、3% ODI(oxygen desaturation index)24.9と、OSASが疑われた。形態分析から上顎骨劣成長に伴う鼻腔狭窄、アデノイド・口蓋扁桃肥大を認め、また、CFDでは鼻腔およびアデノイドでの通気障害を認めた。保護者はATの希望がなく、歯列不正に対してRMEによる上顎側方拡大のみを行った。拡大後いびき等の自覚症状が軽減され、RDI 6.7、3% ODI 13.3と改善した。形態分析では、咽頭気道形態に明らかな変化は認めなかったが、CFDでは鼻腔部分の最大速度は12.5m/sから5.4m/sに、咽頭気道部の最大陰圧も-173.5Paから-36.6Paに軽減し、通気障害が改善された。 考察:本症例では、通気障害が示された鼻腔が、上顎骨側方拡大に伴い拡大され、OSAS症状が改善したと考えられた。またCFDはOSAS原因部位の特定に有効であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は実際の治験を実施し、実施の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を有するDown症候群児に対して、通気障害が示された鼻腔が、上顎骨側方拡大に伴い拡大され、OSAS症状が改善したと考えられたことを証明できた。また流体シミュレーション(CFD)はOSAS原因部位の特定に有効であった。上記の内容は当初の研究計画通りであり、これらの結果を学術大会にて公表し、評価を得ることができた。OSAS障害部位の特定方法および、その歯科的治療法を確立できた点において、研究はおおむね順調に進展しているといえる。また、Down症候群児の保護者に対して睡眠に関するアンケート調査も実施しており、アンケート結果をとりまとめて、今年度以降はその結果を公表することが目標である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はDown症候群児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に関する疫学調査により実態の把握と、有効な診断・治療法の確立が目標である。現在、保護者に対して睡眠に関するアンケート調査も実施しており、アンケート結果をとりまとめて、今年度以降はその結果を公表予定である。また、CTデータを用いて、アデノイド、口蓋扁桃肥大と鼻腔通気障害の程度、そして顎顔面形態の関係性を明らかにする研究を実施しており、疫学調査、治験の両面から本研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
研究は概ね予定通りに進捗した。進捗状況の中で、当初予定していた実験が、平成29年度に実施するのが望ましいと判断したため、一部予算を繰り越すことで、今後の研究がスムーズに展開するように図った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
睡眠時無呼吸症候群の流体解析に必要なソフトウェアの購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)