2018 Fiscal Year Research-status Report
車椅子適合支援の効果がケア向上にもたらす役割についての研究
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16K12214
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
関川 伸哉 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (60326717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
昆 恵介 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (30453252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス評価 / 高齢者座位姿勢 / 車椅子適合 / 心拍計測 / アミラーゼ活性値 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目の今年度は,主に以下に示す3つの方向性から研究を実施した. 一つ目は,初年度末から実施していた”車椅子座位姿勢の違い(良姿勢と不良姿勢)による身体ストレスに関する本実験(健常者対象)“を行った.今年度は,10名の被検者を対象に異なる車椅子座位姿勢での評価を延べ10日間実施した.昨年度までの実施(検証)結果を踏まえて,ウエラブル型心拍計(Polar M430)を実験に統一で用いた.ストレス評価パラメータには,心拍数,心拍変動(LF,LF/HF),アミラーゼ活性値,フリッカー値,NRSを用いた.また,不良姿勢の再現性の確認に,臀部接触面積と左右臀部最大圧を用いて評価を行った.全てのパラメータについて統計処理を行い,現在,論文として整理中である. 二つ目は,高齢者福祉施設での臨床介入を通して,車椅子適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.今年度は,車椅子適合支援実施場所を新たに一施設(特別養護老人ホーム)増やし,合計2施設に各1回/月の合計12回×2施設=24回の臨床介入を行った.現在も臨床介入は続いているが,昨年末に介入後の評価結果がまとまった59名について分析を行った.その結果,車椅子適合支援介入前後でADLスコアー及び生活評価スコアーが有意に増加していた.また,座位保持能力別に分析を行った結果,座位保持能力の違いを問わず,介入後にいずれのスコアーも増加ししていた. 三つ目は,次世代型高齢者車椅子PS-1Design-Bの開発を行った.昨年度,臨床介入データをもとに現状の利用者の身体寸法,身体状況をまとめ新型の車椅子開発についてのプロジェクトを立ち上げた.今年度は,試作機1号を完成させ,既に臨床評価を実施し複数個所の改良を行った.また,みやぎ産学官金連携フェアに出展して,多くの来場者から評価を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ目は,車椅子座位姿勢の違いが,対象者の快適性ににもたらす影響について明らかにすることを目的に,健常者10名を対象とした本実験を行った.昨年度の基礎実験結果を踏まえて,計測方法,計測条件,計測環境,計測機器などを充分に検討し,再現性の高い実験を実施することができた.ストレス及び疲労等の評価パラメータには,心拍数,心拍変動,アミラーゼ活性値,フリッカー値,NRSを用いた.評価の結果,ストレス状態を把握する心拍変動のLF/HFには,統計的にも有意差を確認することができた.しかし,同じく心拍変動のHF及び唾液アミラーゼ値には,有意差をみることができなかった.但し,NRSの値からは,不良姿勢が座位時間の増加に伴い有意に高い値となり,痛みを感じるレベルにあることが明らかとなった. 二つ目は,高齢者福祉施設での臨床介入を通して,車椅子適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.臨床介入の回数を,昨年の約2倍の24回実施した.介入結果についての分析も行なうことができ,車椅子適合支援の効果を総合的に把握することができた.一方,ストレス,心理的負担,快適性に関する客観的な評価,検証までには至っていない.車椅子適合支援の実施を続ける中で,その効果と役割が徐々の認識され始めてきている.昨年度は,臨床現場主催の勉強会を始めて開催することができた. 三つ目は,次世代型高齢者車椅子PS-1Design-Bの開発を行った.現在,高齢者の方々が使用している車椅子には,複数課題が存在し,新たな車椅子の開発・販売・流通が必要となる.今年度は,新たにPS-1Design-Bを開発し,臨床導入・評価を実施した.定期的に,県内の車椅子事業所とのミーテイングを行い開発・改良を進めてきた.今後(次年度)は,Design-Bの改良と量産可能な車体・販路の開発を行う必要がる.
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Strategy for Future Research Activity |
4年目の今年度においては,3年間の実施結果を踏まえて主に以下の点について研究を進めることとする. 一つ目は,高齢者福祉施設で,実際に車椅子利用者の心拍計測を行い,心拍変動解析を試みる.計測条件は,介入前後比較とし,日中座位時間の長時間連続計測とする.本件は,高齢者福祉施設との充分な協議が必要なため,実施に向けての準備が必要となる. 二つ目は,車椅子適合支援の効果を総合的評価にとどまらず,各論的評価を実施したい.具体的には,ストレス評価以外に転倒リスク,褥瘡発生リスク(座位姿勢含),誤嚥リスク(食事動作の改善含)について検討したい. 三つ目は,次世代型高齢者車椅子PS-1Design-Bの開発と臨床評価の実施を引き続き行う.今年度は,量産可能な車体の開発を目指し作業を進める. 四つ目は,3年間の結果を論文にまとめることと,今までとは異なる分野での研究発表等についても検討する.
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度は,780,000円(内180,000円は間接経費)の請求を行っており概ね当初の予定通りに計画が進んでいる. (使用計画) 今年度は,昨年度の残金を含め予定通りに計画を進行する予定である.
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Research Products
(3 results)