2018 Fiscal Year Research-status Report
帰還困難区域内コミュニティの環境管理に係る合意形成方法の研究
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16K12377
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
山中 知彦 新潟県立大学, 国際地域学部, 特任教授 (40554382)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東京電力福島第一原子力発電所事故被災地域 / 帰還困難区域 / 復興再生拠点 / 環境再生事業 / 環境管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の社会実験のカウンターパートである長泥行政区では、平成29年度に動き出した国の環境再生事業が平成30年度に本格稼働し、行政区役員は受け入れ体制を整えるための調整に追われた。他の19行政区の除染で排出された汚染土を自分たちの農地に埋めて覆土するという国の事業を苦渋の選択で受け入れた結果、国の事業に対する積極的関与や環境管理に係るコミュニティの主体性を確保することが困難になりつつある。そこで改めてコミュニティ環境に関する住民意識の変化を把握するためのアンケート調査を行ったところ、次世代の不在による環境管理への不安が将来の問題・課題として強く認識されていることがわかった。 一方、昨年度の研究で最も成果の上がったのが、これまでフィールドワークを集中してきた飯舘村長泥行政区を相対評価するために行った、帰還困難区域全域に関する状況把握であった。インターネット上の情報収集および双葉郡富岡町民を対象に活動するNPOとみおか子ども未来ネットワーク理事長の市村高志氏との情報交換、双葉町前町長の井戸川克隆氏および飯舘村村長の菅野典雄氏へのヒアリング調査などにより、同じ帰還困難区域でも様々な状況が展開していたことがわかった。これらの作業は同時に、最終年度に予定している地域継承方法論の研究に係る著書の原稿執筆に向けた情報収集でもある。 10月に札幌の北海学園大学豊平キャンパスで開かれた日本地域学会大会で「帰還困難区域・飯舘村長泥行政区のコミュニティ環境と住民意識の変化 ―意識集合による地域デザイン手法の開発に向けてその2」と題する発表を行った。 また昨年度は2回の公開研究会に参加し、研究成果の一端を役立てることができた。区報の編集発行も当初予定通り4回行うことができ、環境再生事業の進捗他に関する情報提供を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施状況報告書における今後の研究の推進方策の記述に即して、その理由を以下に記す。 ・社会実験: [国の事業の把握]:飯舘村長泥地区環境再生事業運営協議会資料を通し環境再生事業のプログラムを、長泥行政区役員からの聞き取りにより復興再生拠点事業の進捗状況について把握することができた。 [国の事業への意見聴取]:アンケート調査によって、次世代の不在による環境管理への不安が将来の問題・課題として強く認識されていることがわかった。 [実施体制の検討]:国の事業の完了後の長泥行政区内の環境管理方法については、いまだ住民間で合意形成のめどが見えていないため、管理主体としての自助・共助・公助にあたる役割分担や管理システムについての検討には着手できなかった。 ・地域継承方法論の研究:最終年度に予定している著書の原稿執筆に向け、参考となる社会学関係等における方法論の文献研究をはじめた。 ・研究発表および公開研究会:日本地域学会大会において、国の事業の進捗状況を勘案した当該調査研究に係る研究発表を行った他、2回の公開研究会に参加した。 ・区報の編集発行は、予定通り4回行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度における当面の研究実施目標を以下に記す。 ・社会実験:国の事業の進捗状況を見極めつつ、前年度のアンケート調査の結果確認された、次世代の不在による環境管理への不安を解消する方法を探るため、長泥行政区の後継世代(40歳台以下)の考え方を聞き取り調査する。また前年度に引き続き、長泥行政区の住民主体の環境管理方法を検討するために、広く帰還困難区域全体における同様の動きについて情報収集を行う。 ・地域継承方法論の研究:最終年度に予定している著書の原稿執筆に向け、参考となる方法論の文献研究を続けるとともに、プロットの検討を始める。 ・研究発表および公開研究会:平成29・30年度の日本地域学会大会発表を土台に、当該調査研究に係る論文をとりまとめ、中間整理を行う。社会実験の進捗状況を勘案しながら、秋以降に公開研究会の企画実現を模索する。 ・区報の編集発行:予定通り4回の発行を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末発行の区報印刷費等をクレジットカード決済で行い、実支払いが年度を超えた。
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Remarks |
国際シンポジウム「福島第一原発事故避難者の経験:研究者と当事者の共同シンポジウム」にコメンテーターとして参加。 公開研究会「福島を知るvol.5 ~帰還困難区域、長泥の今~」に参加し、「長泥地区の変遷」を報告した。
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Research Products
(1 results)