2019 Fiscal Year Research-status Report
帰還困難区域内コミュニティの環境管理に係る合意形成方法の研究
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16K12377
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
山中 知彦 新潟県立大学, 国際地域学部, 特任教授 (40554382)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東京電力福島第一原子力発電所事故被災地域 / 帰還困難区域 / 地域政策 / 復興再生拠点 / 環境再生事業 / 環境管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度のアンケート調査の結果確認された、次世代の不在による環境管理への不安を解消する方法を探るため、長泥行政区の若手世代(40歳台以下)の考え方に関する聞き取り調査を行った。また前年度に引き続き、長泥行政区の住民主体の環境管理方法を検討するために、広く帰還困難区域全体における地域政策について情報収集を行った。 帰還困難区域に指定された浪江町津島地区を中心に活動するNPO未来といのちが福島県から受託した「県内避難者・帰還者心の復興事業」に協力し、飯舘村長泥地区の変遷を伝える30枚のパネルを編集した。同NPOは8月(二本松市市民交流センター)・12月(福島市民会館)・3月(コラッセ福島)の3回にわたりこれらのパネルを含むパネル展および住民交流会を開催した。 3月にハワイのホノルルで開かれる予定であった国際地域学会の太平洋大会に向けて、帰還困難区域における地域政策に関するChange in Policies and Problems in the Difficult-to-Return Zones of the Fukushima NPP Accident: The Relationship between the National Government and Local Governments in an Emergencyという演題でフルペーパーを投稿し準備を進めたが、直前に新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響を受け大会が中止となった。 区報の編集発行は当初予定通り4回行うことができ、若手世代の関する聞き取り調査結果を全世帯に伝えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施状況報告書における今後の研究の推進方策の記述に即して、その理由を以下に記す。 ・社会実験:国の事業の進捗状況を見極めつつ、長泥行政区の後継世代(40歳台以下)の考え方を聞き取り調査した。また前年度に引き続き、長泥行政区の住民主体の環境管理方法を検討するために、広く帰還困難区域全体における地域政策について情報収集を行った。 ・地域継承方法論の研究:最終年度に予定している著書の原稿執筆に向け、参考となる方法論の文献研究を続けるとともに、プロットの検討を始めた。 ・研究発表および公開研究会:予定していた国際学会での発表が、新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響を受け中止となったが、準備したフルペーパーによって研究成果を英文論文としてまとめることはできた。また、予定外の関連NPOとの活動連携によって、研究成果を活かしたパネル展が実現し、帰還困難区域の住民へ調査研究活動の成果の一部を還元することができた。さらに作成したパネルやデータを次年度以降に活用することも可能となった。 ・区報の編集発行は、予定通り4回行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度における当面の研究実施目標を以下に記す。 ・社会実験:国の事業の進捗状況を見極めつつ、前年度に引き続き、長泥行政区の住民主体の環境管理方法を検討するために、広く帰還困難区域全体における同様の動きについて情報収集を行う。 ・地域継承方法論の研究:最終年度は研究成果のまとめに重点を置き、本研究全体の報告書を一冊の著書の原稿としてとりまとめる。最終的な考察においては長泥行政区から他の福島の帰還困難区域、さらに今後領域的な地域継承が困難になると思われる限界集落や消滅集落、縮減市街地や空洞化住宅地における環境管理に係る合意形成他、コミュニティの継承方法へ敷衍する。 ・研究発表および公開研究会:新型コロナ・ウィルス感染拡大の終息状況を勘案しながら、当該調査研究に係る論文をとりまとめ、発表機会を探る。秋以降に昨年度協働作成したパネルを活用した巡回展や公開研究会の実現を模索する。 ・区報の編集発行:予定通り4回の発行を目指す。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた国際学会での発表が、新型コロナ・ウィルス感染拡大の影響を受け中止となったため、学会参加費・旅費として計上していた額を次年度に繰り越した。 次年度に新型コロナ・ウィルス感染拡大の終息を見極めながら、今年度果たせなかった国際学会での成果の発表を行いたい。
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