2018 Fiscal Year Research-status Report
最先端電子顕微鏡法を駆使した福島原発由来Cs粒子の生成過程・移行挙動の解明
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16K12585
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宇都宮 聡 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40452792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 敏彦 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20354904)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福島第一原発 / 高濃度放射性Cs含有微粒子 / ウラン / デブリ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに放出物質から事故時の燃料の状態把握が行われてきたが、溶融燃料と炉構造物との混合により形成され現在も残存していると考えられるデブリの情報は未だ限られている。そこで、放出物質に含まれるデブリのフラグメントを透過型電子顕微鏡(TEM)で微細分析し、炉内で起きた燃料との反応や現在のデブリの状態を考察した。 福島県で採取した土壌から、高濃度に放射性Csを含有する粒子(CsMP)を単離し、集束イオンビームによりCsMPを薄片化し、TEMで分析を行った。全てのデブリフラグメントはCsMPとともに存在しており、二種類の性状が見られた。一種類目は~70 nmのuraninite (UO2+x)粒子がエピタキシャル成長した~400 nmのmagnetite (Fe3O4)の自形結晶に包まれて存在していた。magnetite表面にはUの核分裂生成物であるTcやMoが吸着していることもわかった。二種類目は~200 nmのzirconia (ZrO2)とuraniniteの等軸晶系の共融混合物で、UとZrの混合比は0.14-0.91とばらつきがあった。共融混合物表面には~6 nmの空孔が見られ、揮発・気体成分を取り込む可能性があることがわかった。 以上の結果から、炉内での水蒸気による金属構造物の酸化反応が、被覆材(Zr合金)だけでなくFeを含む構造物に対しても部分的に起きていることがわかった。また、生成した酸化物は核燃料の主成分であるuraniniteと炉内でも共存していると考えられる。フラグメントには空孔や核分裂生成物の吸着が見られたことから、形成したデブリにはナノスケールで放射性物質が含まれる可能性が示唆された。さらに、CsMPによってこれらのデブリフラグメントは様々な内包物とともに運搬され、吸引可能な大きさの粒子として環境中へ飛散することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
デブリフラグメントの直接分析という予想していた以上の難関に挑戦し、世界で初めてシビアアクシデントで放出されたウランの原子像をとらえた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はウランを含む燃料微粒子の同位体分析、シンクロトロン光ミクロビーム分析を行い、最先端の結果を提示する。
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Causes of Carryover |
本研究ではデブリ組成に関する重要な分析結果が得られており、機密を保持しながら次年度に結果の整理と公表を行う予定である。
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Research Products
(2 results)