2016 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺初期化細胞を用いた放射線誘発ゲノム融合分子痕跡検出系樹立の試み
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16K12597
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 啓司 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (00196809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線 / 甲状腺 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故(以降福島原発事故)後の小児甲状腺超音波検査で、極めて高い頻度で甲状腺がんが報告されている。これらの甲状腺がんが、被ばくの影響であるかどうかを判断する一助として、細胞に残る放射線痕跡の同定が極めて重要である。そこで本研究では、甲状腺がんのdriver変異であるキナーゼ遺伝子融合変異が、放射線分子痕跡として被ばく細胞内に誘発されるかどうかを検証するための、定量的遺伝子変異検出系の樹立を試みた。 まず、differential RT-PCRの実験条件を決定するために、PCRの初期条件として、変性および伸長反応の温度をそれぞれ95℃と72℃に固定し、プライマーのTm値を考慮しながら、ハイブリダイゼーション温度を検討し、最適のプロトコールを模索した。また、RT-PCR増幅曲線からCt値を算出し、3'プライマーのサイクル数が少なくとも25よりも小さく、5'プライマーと3'プライマーのCt値の差が少なくとも2以上になるプライマーペアを選択する用に計画した。 前述の検討で陽性になったRT-PCR産物を用いて、融合遺伝子の決定を行うため、3'プライマーとして、既にキナーゼドメインに設定したものを用い、一方、5’プライマーは、遺伝子特異的プライマーを個別に設計を計画した。検討する候補遺伝子としては、CCDC6 (PTC1)、NCOA4 (PTC3)、TRIM24、RFG9、FKBP15、TBLX1XR1およびAKAP13遺伝子で、Primer Expressソフトウェアを用いてそれぞれの遺伝子に対して複数のエクソン用プライマーを設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、研究計画に沿った実験を実施し、おおむね予想された結果が得られている。初期化細胞を用いた検討については、やや予定よりも実験が遅れているが、全体を通じて、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度の結果を受けて、RET発がん陽性標本の融合遺伝子の決定を継続し、非照射細胞、ならびに0.1 Gyから10 Gyまでのγ線を照射した細胞で、RT-PCR陽性になったディッシュの数と、タイプ別の融合遺伝子の出現頻度を算出する。もし、1個のディッシュでRT-PCR陽性が確認された場合、融合遺伝子の頻度を5x10-4として算出して、融合遺伝子変異の線量依存的出現頻度を求める。高線量照射群では、1個のディッシュ中の細胞に複数の融合遺伝子変異が誘発される可能性が出てくるが、複数の融合遺伝子が検出された場合、例えば、RET/PTC1とRET/PTC3が同時に検出されたような場合には、融合遺伝子出現頻度は2倍の1x10-3として算出する。 また、RET遺伝子融合における放射線の分子痕跡を同定するために、RET/PTC1およびRET/PTC3変異が見つかった場合には、ゲノムDNAにおいて遺伝子融合部位の塩基配列を決定する。具体的には、PTC1(CCDC6)遺伝子の場合にはイントロン1に、PTC3(ELE1)遺伝子の場合にはイントロン5に複数のフォワードプライマーを設定する。一方、RET遺伝子は、イントロン11に複数のリバースプライマーを設定し、LA taq DNAポリメラーゼにより長鎖PCRを行う。増幅産物をExoSAP-IT PCR clean-upキットにより精製し、Big Dyeターミネーターシーケンスキットを用いてABI3730シーケンサーで塩基配列を決定する。
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Research Products
(3 results)