2016 Fiscal Year Research-status Report
緊急避難行動の進化心理学―台風がくると田んぼを見に出かけたくなるのはなぜか?
Project/Area Number |
16K12837
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高橋 征仁 山口大学, 人文学部, 教授 (60260676)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューリスティックス / 進化心理学 / 避難行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、災害時の緊急避難行動にみられるヒューマン・エラーについて、進化心理学的な観点からとらえなおすことで、そのメカニズムや制御方法を解明することにある。具体的には、災害時に人的被害が拡大する要因として、自己防御よりも、①情報収集や②家族保護、③職務遂行などの社会的行動を優先してしまう心理的傾向に着目し、その進化的背景や現代社会における機能不全について検討を行う。このように、ヒトの心に根差す進化的脆弱性と現代社会状況との関連に着眼することで、新たな防災・減災科学の創出に挑戦していく。 これらの目的を達成するために、平成28年度は、主として2種類の調査研究を行った。1つ目は、東日本大震災に関する大規模データの2次分析であり、国土交通省都市局の避難行動調査と、宮城県健康福祉部による仮設住宅入居者健康調査をもとに、調査研究を行った。その結果、震災直後に、性や世代によって異なった社会的分業が生じることや、家族や近隣との社会関係がレジリエンスに与える影響が明らかになった。 2つ目の調査研究として、唾液アミラーゼモニターを用いて、ストレス反応についての予備的研究を行った。具体的には、ストレスの種類と唾液αアミラーゼ活性(salivary α-amylase activity)、主観的心理尺度の3者関係についての仮説構築を行うことが主たる目的である。この研究については、現在もデータ収集中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前に予定していた国土交通省都市局の避難行動調査のデータだけでなく、宮城県健康福祉部による仮設住宅入居者健康調査のデータなども利用することができたため、被災後の心理的状況などについても、進化心理学的観点から考察を深めることができた。他方、予算の都合から生理的指標を用いた調査研究がある程度制限されてしまった部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究においては、東日本大震災後の避難行動におけるヒューマン・エラーの事例集を作成したうえで、それぞれに該当する進化心理学的説明とその制御方法について検討を行う。生理的指標を用いた調査研究において、それらのエビデンスを提供できればと考えている。 より具体的には、以下の点に関する研究を深めていく。①自己防御とは別種類のヒューリスティックが喚起されてしまうのは、どのような条件の下でか?②内集団に対する自己犠牲が生じるのは、どのような条件の下でか?③現代社会の生活状況は、どのような点において直観的判断の誤作動を招いてしまうのか?
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Research Products
(4 results)