2016 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格モデルを用いた投球動作中の肩甲帯の関節キネティクスの同定
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16K12997
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 知之 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00209503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スポーツ科学 / 生物.生体工学 / 運動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,投球中の肩甲骨の位置を推定するために,反射マーカーを用いたマッピングマーカー法とpalpatorと呼ばれる肩甲骨位置特定器を用いる.そのため,これらの方法論の確立が重要な課題となる. 本年度は,まず,マッピングマーカー法の計測可能性を検討した.サージカルドレープなどの皮膚保護シートに規則正しく半径6mmの小型反射マーカーを多数貼付し,それを皮膚に貼り付ける方法をはじめ,さまざまな方法を検討したが,最終的には皮膚に直接貼り付ける方法が適しているという結論に至った.マッピングの際のマーカー間の間隔とマーカーの数に関しては,使用するカメラシステムによって,解像度が異なるために,できるだけ解像度の高いものが望まれる.既存の4台の高速カメラを装備したモーションキャプチャーシステム(Proreflex)は旧式であることから解像度が十分ではなく,座位での緩徐な肩関節分回し運動でも十分な精度を保ちながら計測することは困難であった.国立スポーツ科学研究所の有する16台の高速カメラを装備したモーションキャプチャーシステム(Vicon MX)を用いて実施したところ,半径3mmの小型反射マーカーを25mm間隔で6点貼付した場合,座位での緩徐な肩関節分回し運動はもちろんのこと,投球中の計測まで可能であった.今後,上半身に焦点をあて,さらに狭い間隔で数多くのマーカーを貼付した条件で検討する予定である. また,本年度はpalpatorの製作にも取り掛かり,ベータ版は完成した.ただし,文献調査中に,palpatorに圧力センサーを付加することでより正確な特定が可能となることがわかり,現在,その作業に取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請当初予定していなかった校務の増加により,本研究に対するエフォートを下げざるを得なかったことが遅れの主な要因である.他に,palpatorと呼ばれる肩甲骨位置特定器に関して,特定器に圧力センサーを付加することでより正確な特定できるという,新しい知見が報告されたたために,これに追随するために製作予定を変更したこと,そしてそれに伴い必要となるAD変換システムの故障が発覚するなどのトラブルに見舞われたことも原因となっている. 現在,追加された校務も終了に近づいていることと,AD変換システムの修理も終わり,今後はこれまでの計画に則り,本研究を推進できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,現在,製作途中にあるpalpator(肩甲骨位置特定器)の早期完成を目指す.完成後は,投球中に生じる可能性の高い利き手上肢の10肢位程度を選択し、その際の胸郭部,肩甲骨,上腕の位置をモーションキャプチャーシステムで計測する.この計測の際には,マッピングマーカー法とpalpator法の他にクラスターマーカー法などの幾つかの方法を加え,より精度の高くなる方法を検討する.検討した結果から,採用する方法の誤差分布を基にした数式モデルを考案し、運動中の肩甲骨動態推定プログラムを開発する。 この肩甲骨動態推定モデルの加重負荷に対する頑健性を調査し,プログラムの改良を図る.つまり,投球中,上肢帯には遠心力などの運動依存性の力が加わっており,従来研究における無負荷状態でのモデルとは,肩甲骨動態に違いがある可能性が考えられる.そこで,投球動作解析の結果から推定される負荷の範囲内で,加重方向をできるだけ投球動作に近い関節肢位に近づけ,複数の負荷について,肩甲骨動態を調査することによって,上記で検討した数式モデルに修正項を付加する. この後の段階では,肩甲骨を含めた上肢筋骨格モデルの作成と,投球動作解析を平行して実施する予定である.現行の上肢筋骨格モデルでは肩甲骨は正常に可動しないため,改良する必要がある.また,加重負荷では肩甲帯の協調運動に違いが生じることが予想され,それを考慮したモデルを筋骨格モデルに適用する.投球動作解析では,投球時の上体の動きを撮影し,上記で開発したモデルを投球中の上肢帯に適用し,肩甲骨の動きの定量化を目指す.被験者は、大学野球または社会人野球の投手10名程度を予定している.
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Causes of Carryover |
一つの原因は,研究が遅れていることが挙げられ,実験のための装置を製作する段階で変更が生じ,それに伴い実験実施が遅れていることから人件費・謝金の支払がなくなったことが一つの要因である.また,次年度購入を予定していた筋骨格モデルソフトウェアの動作データ入力インターフェイスモジュールが値上げされたために,次年度の予算では不足することが予想され,その分を補填するために次年度使用額として残している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
筋骨格モデルソフトウェアの動作データ入力インターフェイスモジュールは,国内で代理販売しているものの,輸入品のために為替変動の影響を大きく受ける.できるだけ,低い価格帯のときに購入できるよう配慮するが,予算の大半はそのモジュールの購入に充てられる(昨年度見積:2,400千円,一昨年度見積:2,000千円).残額を人件費・謝金とするが,不足することが十分予想され,その分は運営費交付金で充当する予定である.
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