2016 Fiscal Year Research-status Report
嚥下音の時間的・空間的分析と統計モデルによる嚥下機能情報収集システムの開発
Project/Area Number |
16K13028
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
西村 雅史 静岡大学, 情報学部, 教授 (60740363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森野 智子 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20582703)
西田 昌史 静岡大学, 情報学部, 准教授 (80361442)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢者 / 嚥下機能 / 誤嚥 / 嚥下検診 / VF検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下機能低下の早期発見は高齢者の健康維持のために大変重要であり,本研究では咽喉付近の嚥下音を収集・分析することで,嚥下障害の発見や診断につながる情報の自動検出を目指している.統計的な機械学習法に基づいて誤嚥の検出を行うため,本年度は高齢健常者及び誤嚥を疑われる患者からそれぞれ嚥下音データを収集する方法について主に検討した.まず,高齢健常者の嚥下音を収集する機会として,病院や職場等で実施されている健康イベントでの嚥下機能検診に着目した.ここでは歯科衛生士や言語聴覚士が主体となり,反復唾液嚥下テスト(RSST)や改定水飲みテスト(MWST),オーラルディアコキネシスなどの嚥下障害のスクリーニングテストが行われている.これらの測定を一部自動化するソフトウエアを検診用途に提供することで,従来の検診作業を効率化するとともに,大量の嚥下音の収集を可能にした. 一方,誤嚥の判定にはX線による嚥下造影(VF検査)や内視鏡による診察(VE検査)が必要となる.一般に,VF検査やVE検査をせずに正確に誤嚥しているかどうかを判定することは不可能とされている.このため,誤嚥と対応が付いた嚥下音のデータは世の中にほとんど存在しない.我々は連携病院でのVF検査時に,咽喉マイクを装着させることで,X線画像に基づく誤嚥診断が付与された嚥下音データの収集を可能にした.この結果,多量の誤嚥データが入手可能になった上,音の産生部位と観察された嚥下音の関係についても,X線画像データを利用した詳細な分析が可能になった.多量の誤嚥音データが利用できようになった意義は特に大きく,今後,誤嚥の検出・識別性能の大幅な改善が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ここでは統計的な学習に基づく嚥下機能情報の検出・判定を目指しており,その実現に向けて鍵となる嚥下音データの収集環境及び収集方法を研究協力機関と連携して確立した.すでに倫理審査機関の承認を受け,実際の嚥下検診や嚥下障害検査時のデータ収集を開始している.嚥下検診を効率的に実施するためのソフトウエア開発を進め,これまで2回の健康イベントで計69名の(健常)高齢者からRSSTなどのテスト時における嚥下音を収集した.また,VF検査時の嚥下音データについても,既に80名以上の患者からVF画像及びそれに対応する嚥下音データを収集した.
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Strategy for Future Research Activity |
嚥下音と嚥下機能の関係を詳細に分析することが出来る大量のデータが揃いつつある.これら大量の嚥下音データを利用して機械学習を行い,当初研究計画通りに,嚥下機能を自動収集分析できるシステムのプロトタイプを開発する予定である.一方,多元的な特徴量を自動分析の精度改善に生かすとともに,X線検査画像との対応関係を詳細に分析することで,単なる嚥下機能障害の自動検出だけでなく,その原因の同定に繋がる分析までを行い,効率的なリハビリテーションの提案につなげる.
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Causes of Carryover |
今年度は研究協力機関との話し合いの中で,嚥下音データ収集環境の整備を重点的に進めたが,倫理審査など,データ収集が軌道にのるまでに多くの作業時間を要したため,実際の嚥下機能情報収集システム開発への着手が遅れた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データは現在も増強されており,これらの収録データを活用した識別モデルの構築並びにプロトタイピングを実行するため,昨年度に予定していた関連機材の購入を早急に行う.また,国際会議での成果発表や論文投稿も予定通り行う.
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Research Products
(5 results)