2016 Fiscal Year Research-status Report
神経磁場を超高感度な光学的磁気センサで捉える新たな脳機能計測への挑戦
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16K13114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 哲生 京都大学, 工学研究科, 教授 (40175336)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳機能 / 原子磁気センサ / MRI / MEG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで脳磁図(MEG)の計測に用いられてきた超伝導量子干渉素子(SQUID)を凌ぐ新たな超高感度光学的磁気センサを開発し,フレキシブルなMEG計測を実現することを目的として実施する.さらに本研究では,磁気共鳴画像(MRI)の高い空間分解能を活かし、脳神経活動により発生する磁場を新原理の神経磁場依存(NMFD)-fMRIとして直接計測することにも挑戦する.初年度は,まず我々の研究グループがこれまで世界に先駆けて開発したK原子とRb原子という2種類のアルカリ金属を混合したハイブリッド型を用いたMEG計測に向けて,その感度と多チャネル化に向けた理論的・実験的検討を進めた.その結果,K原子とRb原子とを混合して稼働させる際に,K原子の密度をRb原子の密度に対して数百番にすることで感度の向上が期待できること等の新知見を得た.また,MEGの多点同時計測に向けて原子磁気センサの小型モジュール化についても検討を進めた.一方,ガラスセル内に複数の計測点を設定することにより多チャネル化を図る方式についても.独自に多チャネル計測のプローブ光検出方法を進めた. さらに,新たに我々はこれまで直接脳神経磁場を計測できるfMRIとして、スピンロック撮像法の検討を進めて来た。先行研究では、高磁場MRIにおけるスピンロック撮像法の検討がなされているが、高磁場では、生体への影響と共に、計測信号にBOLD信号が混在することが懸念される。そのため、低磁場MRIにおける計測が望ましい。そこで、本研究では、神経磁場に見立てた振動磁場をファントム内のループコイルで発生させ、0.3Tのヒト用低磁場MRI装置を用いて撮像実験を行い、ブロッホ方程式に基づく計算結果と比較・検討した。その結果、本手法による脳神経磁場計測の実現可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記載の通り,原子磁気センサの高感度化については,K原子とRb原子を混合したハイブリッド型のセンサによりK原子と Rb 原子の密度比が重要であり,最適な密度比に設定することで高感度化が実現できることを理論と実験の両面から示す事ができたこと,また神経磁場に伴う局所的なMR信号変化を0.3TのMRI装置を用いた実験により捉えることに成功するなど,おおむね順調に計画した研究内容が達成できていると言う事ができる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,ハイブリッド型光ポンピング原子磁気センサによる多点同時計測に関する実験的検討とそのモジュール化に関する検討を継続して進める.その後,試作したモジュール型光ポンピング原子磁気センサを用いて,ヒトを対象にした様々な感覚刺激に対するMEG計測を実施する計画である.具体的には視覚や聴覚刺激などの呈示に伴って自発脳磁界律動の振幅が変化する事象関連同期/脱同期,ならびに感覚刺激の呈示に誘発されて発生する磁場応答の多チャネル計測を行う計画である。その計測結果を既存のSQUIDシステムを用いた計測結果と比較・検討する.これによりモジュール型光ポンピング原子磁気センサの有用性を示すことができると考えている. さらに,次年度は脳神経活動から発生する磁場から直接MRIによって神経活動を捉える新原理のNMFD-fMRIについて,0.3T-MRI装置において課題となる撮像時間の短縮を目指した新たな高速撮像シーケンスの検討を行う.また,この新原理のNMFD-fMRIの実現に向けては,共鳴周波数が神経磁場程度の大きさとなる超低磁場のMRI装置による方法も考えられる.そこで,上記のモジュール型光ポンピング原子磁気センサを受信コイルとする超低磁場MRIによる神経磁場の直接検出に関しても検討を行い,MEGとfMRIを同一の光ポンピング原子磁気センサで捉えことが可能である事を実証して研究を完結させる.
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Causes of Carryover |
初年度予定していた実験補助が不要であったため,その分の人件費・謝金が未使用となった.また,次年度に比重が高くなる実証実験に必要な物品費が申請時より多く必要と見積もられることからこの未使用分を繰り越すことになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費は項目毎に以下の様に使用を計画している. 物品費については,原子磁気センサの高感度化とモジュール化研究のための電子回路部品,光学部品,磁気信号ならびにMRI信号計測実験のための生体ファントム製作のための電子材料,光学部品,研究遂行に必要な書籍や研究会資料代などを合わせて63万円.旅費については,研究成果の発表,資料収集,調査のために合わせて17万円.実験補助に対する謝金には6万円.その他として国際会議,国内会議の参加費,英文校正,論文別刷代などに12万円.
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