2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代の地球経済システムを構想するためのイスラーム経済知の普遍化の試み
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16K13122
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20611198)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 現代イスラーム経済論 / イスラーム経済学 / イスラーム経済知の普遍化 / 経済学 / 資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
■イスラーム経済学の基本文献資料の収集 イスラーム経済学の理論的特徴を解明するために、参照すべき基本文献を国外の図書館・書店等で収集した。イスラーム経済学は主にアラビア語、マレー語、インドネシア語によって担われてきたため、各言語での知的営為の拠点であるUAEおよびバハレーン(アラビア語)、マレーシア(マレー語)、インドネシア(インドネシア語)において基本文献の収集を実施した。 ■イスラーム経済学の理論的特徴の解明 本研究では、イスラーム経済学が独自提起している経済ビジョンや制度の中から、重要かつ、普遍化の可能性があると思われるイスラーム経済知を選び出し、資本主義との対比を強く意識しながら、その理論的特徴の解明を行った。特に、今年度は、「利子を用いずに損益を貸し手と借り手でシェアするイスラーム金融システム」に焦点を当て、その理論的特徴の解明と普遍化の可能性を探った。そこでは、近代資本主義が生まれる前の環地中海世界の取引手法や、近年起業支援などで用いられ始めているクラウドファンディングなどの手法との比較を行い、それらとの類似点・相違点を検討した。そこでは、損益分担によるリスクのシェアというイスラーム金融手法のメカニズムだけでなく、貸借関係が相互に把握・遡及できるいわゆる「顔の見える」メカニズムが、他の手法とも共通し、かつ、汎用可能な特徴であることが明らかとなった。他方、そうしたメカニズムを銀行を介する間接金融方式で実現している点は、他にはないイスラーム金融の特徴であり、このことの意義を次年度以降、さらに検討していくことを考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イスラーム経済学の基本文献資料については、当初の予想以上の数の文献資料を収集することができた。また、イスラーム経済学の理論的特徴の解明についても、収集した文献をもとに十分な解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は基本文献資料の収集やデスクワークにより重点を置いたため、当初予定していた現地調査や「イスラーム経済知の普遍化」研究会の開催は見送ることにした。来年度は、これらの事項に力を入れていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
今年度は基本文献資料の収集やデスクワークにより重点を置いたため、当初予定していた現地調査や「イスラーム経済知の普遍化」研究会の開催は見送ることにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査や「イスラーム経済知の普遍化」研究会の開催の経費に使用することにしたい。
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Research Products
(5 results)