2017 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical study on the authorship of "The German Ideology"
Project/Area Number |
16K13159
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
窪 俊一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50161659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉岡 敦 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (10712268) [Withdrawn]
大村 泉 東北大学, 経済学研究科, 教授 (50137395)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会思想史 / 編纂学 / 文献学 / ドイツ・イデオロギー / オーサーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マルクスあるいはエンゲルスのいずれがイニシアティブを取り、『ドイツ・イデオロギー』フォイエルバッハ章の草稿を作成したのか、また、唯物論的歴史観のオリジナリティの所在如何、という未解決の問題に、文献学的・編纂学的な観点からアプローチし、最終的回答を与えようとするものである。 前年度に引き続き、平成29年度は『ドイツ・イデオロギー』第1章前半(Entwurf 1~29;30~35)を中心に即時異文箇所を抽出し、基底稿への組み入れ作業とその分析を行った。具体的には、草稿オリジナルと解読原稿とを厳密に照合比較することで、①草稿前半部の即時異文数を確定し一覧表記し、②一覧表記した即時異文の中の同音異義語の書き損じの有無の検討、③多数の定冠詞、不定冠詞の置換及び削除例の存在の確認、④直ちに復活する削除訂正の存在の確認を行った。これらの分析を通じて、書体はエンゲルスのものだが、膨大な即時異文はマルクスに由来すると推断する他なく、結局、この部分はマルクス口述・エンゲルス筆記によって成立したのであり、草稿同章の作成でイニシアティブをとったのはマルクスだという推測が、草稿同章前半(Entwurf 1~29; 30~35)にも成り立つことを確認した。草稿同章の前半部には、後半部とは異なり、草稿オリジナル右欄にも長文の書き入れがある。これらは、左欄の基底稿への補完や独立したコメントである。平成28年度は、仮説として、これらの補完や独立したコメントのうち、短文のものはエンゲルス独自の判断で記入されたものとみて良いが、エンゲルスの筆跡で長文のものについては、基底稿と同様マルクスによる口述筆記の可能性がある、としておいた。平成29年度には、この仮説の妥当性も検討した。本研究の成果は、国際学会で発表し、国際雑誌に投稿・採択されている。
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Research Products
(3 results)