2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pathography of a novelist Morio Kita
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16K13194
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 徹 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (70313856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北杜夫 / 病跡学 / 躁うつ病 / 双極性障害 / 辻邦生 / どくとるマンボウ航海記 / 創作 |
Outline of Annual Research Achievements |
原著論文「作家・北杜夫と躁うつ病 ―双極性障害の診断―」が、平成30年6月の日本病跡学会誌に掲載された。抄録内容は以下。 「作家・北杜夫は、『どくとるマンボウ航海記』『楡家の人々』『輝ける碧き空の下で』などの作品で知られ、また自身が精神科医であり,かつ躁うつ病に罹患していたことを公にしたことでも有名である。北杜夫を病跡学研究の対象とするにあたり,序論である本稿では,双極性障害と診断することの妥当性を検討した。エッセイ等の資料から躁病エピソードと抑うつエピソードを概観し,DSM-5の診断基準と照らし合わせた。その結果、「双極1型障害」と診断した。また特に、初回の躁病エピソードといわれている39歳時から5年間の気分変動に着目したところ、「急速交代型」「混合状態」の特徴を有した時期があったものと考えられた。」 第二報は、平成31年1月に「信州大学附属図書館研究」において、「作家・北杜夫と躁うつ病 ―顕在発症前エピソードと『どくとるマンボウ航海記』―」の表題で発表した。抄録内容は以下。 「作家・北杜夫の双極性障害は、39歳時の躁病エピソードが初発とされているが、それ以前の時期にも、気分変動が存在していた可能性がある。本論では、この顕在発症前の時期に焦点をあて、その精神状態と創作との関連性を考察した。辻邦生との往復書簡集を主な資料として、『どくとるマンボウ航海記』執筆前後の1959-1960年(32-33歳)頃の精神状態を推察した。この時期には既に、躁状態やうつ状態もしくは混合状態を呈していた可能性が高く、これらの精神状態が初期作品の創作に大きく関与しているものと考えられた。特に意欲・活動性のベクトルが上昇に転じる「うつ病相(うつ状態)の後期」が、執筆活動には適した時期であった可能性を指摘した。また同作品が、それまでの文壇にはなかった独自性と新規性を有していることにも言及した。」
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Research Products
(2 results)