2016 Fiscal Year Research-status Report
「イソップ寓話集」の近代ヨーロッパにおける流布と日本への影響
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16K13214
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 博明 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (70184679)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イソップ寓話集 / イソポのハブラス / 伊曽保物語 / シュタインヘーヴェル / ブラッチョリーニ |
Outline of Annual Research Achievements |
15世紀後半のイタリアから、文語訳『伊曽保物語』が天草で刊行された1610年年代まで、イタリアのみならずヨーロッパ各地で刊行された「イソップ寓話集」について、系統別に(1)ヴァッラ、バルバロのラテン語訳、(2)シュタインヘーヴェル編纂のラテン語・ドイツ語版とその系統、(3)マルティン・ドープ編纂のラテン語版とその系統、(4)ヨハネス・カメラリウス編纂のラテン語版とその系統、について検討し、それらのグループ間の複雑な関係性と、また展開の過程について調査・研究した。 ヨーロッパのイエズス会の教育課程における、古典古代に由来する寓話的・教訓的な物語の位置づけを、「イソップ寓話集」を中心に検討した。また、天草において日本のイエズス会士が「イソップ寓話集」を刊行した理由について理解するために、日本のセミナリオの教育における「イソップ寓話集」、ならびに西洋俗語文学の位置づけについて研究した。 『イソポのハブラス』および文語体『伊曽保物語』に含まれていながらも、シュタインヘーヴェル版『イソップ』に見出されない5つの寓話の典拠について、ドープ系統の「イソップ寓話集」のみならず、ブラッチョリーニ、ファエルノ、アステーミオなど、ルネサンス期に刊行された寓話集などを調査した。その結果、少なくとも2つの寓話については、ブラッチョリーニと『カリラ―とデゥムラ』に含まれた寓話が、1546年刊行のスペイン語版「イソップ寓話集」に所載され、それが邦語版イソップ寓話集に影響を与えたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『イソポのハブラス』および文語体『伊曽保物語』に含まれていながらも、シュタイインヘーヴェル版『イソップ』に見出されない5つの寓話の典拠について、すべて中世における寓話集に含まれていることは判明した。しかし、スペイン語版「イソップ物語」所収の2つの寓話を除いては、それらを邦語版2種につなげる出版上の具体的な経路が明らかになっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、『イソポのハブラス』および文語体『伊曽保物語』に含まれていながらも、シュタインヘーヴェル版『イソップ』に見出されない5つの寓話の典拠について探究する。また、「イソップ寓話集」邦語版二種の祖本の存在についても視野に入れて、ロドリゲス『日本語文典』、長崎学林編纂の『日葡辞書』、『羅葡日対訳辞書』、コリヤード編『羅西辞典』も利用して、詳細な分析をおこなう。
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