2016 Fiscal Year Research-status Report
料理レシピサイトCookpadを用いた言語研究:英語のPを使った名付けを中心に
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16K13234
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 雅晴 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30254890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 雄一 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70280352)
長野 明子 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90407883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前置詞 / 名づけ / 言語接触 / 日英比較統語論 / コーパス言語学 / 言語処理 / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、投稿型料理レシピサイトCookpadを用いた初の言語学的研究である。特に、レシピの名づけ(日本語での料理名)に英語の前置詞が生産的に使用されている事実に着目し、言語処理、言語理論、言語接触の視点から複合的に分析することを試みる。具体的には、(Q1)前置詞がCookpadの名づけでどの程度使用され、通時的変化は観察されるのか、(Q2)日本語の当該名詞句構造が生成統語理論でどのように説明することができるか、(Q3)日本語と英語の言語接触について、どのようなことがわかるか、という3つの問いに取り組むことで、新たな学際的研究領域の構築を目指すものである。
平成28年度は、まず、これらの問いに取り組むための基盤固めとして、Cookpad Dataを分析・整理するための体制づくりを行うことにしていた。これについては小野を中心にサーバ構築等を進め、機器類が整備された。さらに、リサーチ・アシスタントや大学院生も加わった形で研究を進めていくやり方も確立した。
また、平成28年度は前年度からのものも含め、研究成果を学会で発表し、専門家からのフィードバックを得たり、研究者のネットワークを構築する足掛かりを得ることが目標とされていた。これについては、島田と長野が2016年5月に「Food and Culture Translation第2回国際会議(FaCT 2)」(イタリア)で、2016年8月に「欧州英語学会第13回大会(ESSE 2016)」(アイルランド)で共同発表を行い、2017年3月には「言語処理学会第23回年次大会」(茨城県つくば市)で島田と長野が共同研究を、小野がリサーチ・アシスタント、大学院生とともに研究発表を行い、多くの知見を得た。小野は同月、アメリカの国際会議でも関連する内容を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
英語前置詞を含むクックパッドのレシピタイトルについて、当初最も調査が進んでいたのはonを含んだものであったが、それに加えて、in、withを含むものについても調査を進展させることができた。データの面では研究分担者の小野が中心になって、on、in、withの用法に基づく分類・整理が大きく進んだ。そこから日本語に借入されている英語前置詞の働きの特徴や借入それ自体の法則性を分析し、言語理論的考察についても多くの興味深い知見を得た。これは当初想定していた以上の前進である。
また、国際会議でフランスの言語研究者や言語処理研究者、Cookpad社の研究部門の担当者と研究交流ができ、学内のリサーチ・アシスタントや大学院生の本研究に対する理解の深まり度も想定以上で、今後の研究体制をかなり強化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまでに想定以上に得られた研究成果をいちはやく論文にして複数の学術誌に投稿する。その中で問題整理を行い、分析を洗練させていく。
次に、研究発表の形式でも情報発信をしていく。平成29年度は、前年度から研究交流が続いているフランスの言語研究者、さらには国内の有力な研究者を招いて6月26日・27日に筑波大学でワークショップを開催することが決定している。また、九州大学の廣川佐千男教授、クックパット社の原島研究員を招いて、つくばグローバルサイエンスウィークに参加し、ワークショップを行うことも内定している。さらには、専門性の高い研究会での発表ばかりでなく、料理を対象とした研究であることから、成果を一般の国民にも積極的に還元することも視野に入れる。平成29年度は、「きらめき☆ときめきサイエンス」において、中学生に言語学入門として研究成果を還元することも決まっている。
予定していた推進計画にこれらの取り組みも加えながら、当初の目的を果たしていく。また、コーパスの扱いに長けて、本研究の内容もよく理解している研究者1名にあらたに分担者として参加してもらうこととし、研究のスピードを加速させ、英語の歴史資料を用いた研究にも着手し、調査の幅を広げていくこととする。
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Causes of Carryover |
前年度の調査では、前置詞のデータの収集が予想していた以上に進んだ。また、国際会議で発表したことにより、海外の研究者との交流が進展し、今後共同研究を進めていくことになった。これらの理由により、次年度に研究成果を発表する機会の増加や海外の研究者を招いてワークショップを開催することが見込まれるに至った。従って、当該年度予算の効率的な運用により生じた未使用分の助成金は翌年度以降の新たな展開のために使用する方が資金の有効な使い方であると判断し、次年度使用額にすることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランスのリヨン大学の研究者および国内の形態論研究者を招いてワークショップを開催し、それにあわせてリヨン大学の研究者と本課題の研究者全員とで1週間にわたる研究打ち合わせを行う。それにより、研究速度をあげ、内容の充実を図る予定である。ワークショップおよび打ち合わせでは、本課題にかかわる言語接触のテーマで、等位複合語等を扱うことにしている。ワークショップは平成29年6月26日・27日に茨城県つくば市の筑波大学で実施し、招聘研究者の旅費および謝金として次年度使用額を使用する。
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[Presentation] Mirativity and Focus in DP2016
Author(s)
Masaharu Shimada and Akiko Naano
Organizer
Olomouc Linguistic Colloquium 2016
Place of Presentation
オロモウツ・パラッキィ大学(オロモウツ、チェコ共和国)
Year and Date
2016-06-10
Int'l Joint Research
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