2018 Fiscal Year Annual Research Report
Between scientific and conventional knowledge-Anthropological study of the Baobab oil controversy
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16K13304
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉村 和彦 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (40211982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 文彦 名城大学, 外国語学部, 教授 (40363882)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 教授 (60340767)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在来知 / 科学知 / 公共人類学 / 途上国の科学 / 科学の複層性 / 分離融合 / 新聞紙上での論争 / 薬草師 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の開始された2016年くらいからタンザニア政府でも、改めてこの論争に関する検証が必要になり、政府が主導する形で検討委員会が行われている。本研究の中心的なタンザニアにおけるカウンターパートの椿延子氏もこの委員会に参画しているが、この委員会の動きは緩慢である。その要因の一つは、依拠してきたデータが国内の自前の研究機関によるものではなく、参画しているアカデミックな立場の研究者も、きわめて古いデータに基づく議論を繰り返していることがある。 同時に、必要な自前の実証研究関しては、実験設備劣悪な状況と科学研究費の少なさによって、まったく進展していない。このような状況の中で、タンザニアにおける「科学知」がいかに生み出されるかということに関しては、その政治的背景など状況の確認はでき、伝統的な住民の知とのとの摩擦の大きさが浮き彫りされた。同時に、政府からのバオバブに毒性があるという情報以降もそれを伝統の視点から使用し続けてきた農民層の調査を行い、それが、人の病状の改善にかかわるだけでなく、鶏の重篤な病気に対しても改善の可能性があることが浮き彫りになってきており、タンザニアのイリンガ大学のDr.Matojoなとの共同研究がバオバブ油の薬効の新しい知見を生み出しつつあることは特筆できる成果である。この成果はまだ学術雑誌への掲載にはいたっていないが、タンザニアのような大学、研究機関での先端的な研究ができないところでも、広く農村の中に存在する先進社会にはないデータ群によって、先進社会にはできない、「発見」の可能性があることを明らかにした。在来知の存立状況は、伝統か近代化という技術の進化図式だけではなく、現実には、在来知を支えうる層が、専門家という集団の中に限定される近代の科学知の存立基盤とは異なり、巨大な大衆の被験者に支えられる可能性があることであり、その一端を明らかにできた。
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Research Products
(1 results)