2019 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical study of decision-making theory by economic experiments with insects
Project/Area Number |
16K13351
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
竹内 幹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50509148)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 実験経済学 / ナッシュ均衡 / 昆虫実験 / カブトムシ / 頭角長 / 混合戦略均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
カブトムシのオスの闘争行動ならびに頭角長の決定要因をゲーム理論的に解釈し、また、理論的には頑健であるものの実証することが困難とされている混合戦略均衡を観察することが、本研究課題の目的であった。 闘争行動をナッシュ均衡として解釈する2つの方法について、理論モデルを考察し、データ検証できる段階にいたった。第1段階として純粋戦略均衡としてデータ分析をしたのちに、第2段階では混合戦略均衡として再解釈した。 混合戦略として解釈する段階において、さらに、戦略空間が異なる2つのゲームを考察する必要があることがわかった。1つ目は、頭角長が体長に比して長くなる閾値において頭角長を決めるときの混合戦略である。この解釈にそった分析は当初よりすすめており、頭角長の閾値が戦略的に決定されることを明確に裏付ける結果を得ることができた。 2つ目は、闘争行動における混合戦略である。頭角長が闘争の勝敗を決定するのであれば、頭角の短い個体が闘争を選択する確率はゼロに近くなるはずである。だが、実際は、観測データから推定される闘争選択確率は22%程度であり、ゼロからの誤差とは言いがたく、それは混合戦略として解釈すべきものであった。闘争を選択するかどうかは、闘争相手の体格や頭角長の観測結果にも依存する。そこに一定の誤差が含まれるとしたうえで最適な行動をとっていると仮定すれば、闘争選択確率も整合的に説明可能である。 上記2つの解釈を包含する統一モデルの考案をすすめ、データ検証できるモデルを複数提示できるにいたったのが主な研究実績である。 そして、モデルのパラメータを推定する際には、従来の回帰分析は不十分であったので、複雑な構造に対応できる深層学習や機械学習のソフトウェアと計算能力の高いハードウェアを用いてデータを解析した。その結果、闘争行動のランダム性を考慮にいれることができ、混合戦略均衡を実証することができた。
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