2016 Fiscal Year Research-status Report
植民地期台湾・朝鮮の国民教化装置に関する横断的調査研究
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16K13512
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北村 嘉恵 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20322779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 和行 天理大学, 人間学部, 准教授 (00584799)
樋浦 郷子 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (30631882)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学校文書 / 学校沿革誌 / キリスト教会 / 神社 / 地域史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の国民創出・統合のプロセスにおいて教化装置としての学校、神社、教会が担った機能および相互の協同・競合関係を、地域の人々の動向を視野に入れて実証的に解明することを目的としている。このため本研究期間中には、19 世紀末から20 世紀初頭に帝国日本に組み込まれた台湾・朝鮮を対象として基礎史料の体系的な調査・整理・解読を進め、領域・地域横断的なデータベースの構築をめざしている。初年度にあたる2016年度は、「研究実施計画」に即して、以下のとおり進めた。 1.研究代表者・分担者が経常的に情報・データの共有と意見交換を行うためのプラットフォームを構築するとともに、課題の共有化および調査研究の具体化のため東京で研究会を開催した(5月初頭)。 2.国内外の地域教育史に関する文献を渉猟し、とくに学校資料の所蔵・整理・研究状況をサーベイした。また、日本植民地期に開設された初等教育機関をリストアップしたうえで、関係資料の所在状況調査を悉皆的に進めた。以上をふまえて本研究期間中の調査対象地域の検討を行った。 3.台湾南部(台南、高雄)において、国民小学や高等職業学校(公立実業講習所を前身とする)、台湾基督長老教会、台湾糖業公司等の諸機関や個人の所蔵する文書・写真等の調査・整理を進めた(8月、3月)。このうち許可の得られた資料についてはデジタルカメラにて撮影を行うとともに、悉皆的な目録の作成を進めた。 4.これらの成果の一部はすでにとりまとめて公刊しており、調査地域に還元するとともに、電子媒体としてオンライン公開し共有化を進めている。また、アジア・プラットフォーム研究会(8月)にて個別研究として発表するとともに、引き続き主要資料の翻刻データに解題を付して公刊を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた、共同研究のプラットフォーム構築、台湾での資料調査、収集資料のデータベース化は、いずれもおおむね予定通り実施することができた。ただし、これまでの実地調査を通じて、事前調査で把握していた以上に多くの資料を確認することができたこと(とくに個人所蔵資料)、学校所蔵資料については個別の学校単位ではなく広域的な学校の系譜(本校・分校・分教場・分離教室、講習所等)に留意する必要が明確になってきたこと等から、本年度の調査対象地域は台湾南部に集中することとした。当初予定していた台湾東部については第2年目の調査進捗状況をふまえて改めて検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の調査を通じて、台湾に関しては事前に想定していた以上の広がりが確認されている。予算上の制約があることから、本研究期間中には、台湾全島の悉皆的な調査を念頭におきつつも、調査対象について次のように重点化したうえで系統的に進めることとする。 1.新化地域(台南市)を基点として調査対象地を周囲に拡張していくという方法を採ること 2.学校沿革誌、公文書の所蔵が想定される地域を優先的に調査対象とすること また、国立台湾歴史博物館が企画展に向けて教育史資料調査を計画していることから、担当者との協議をふまえて可能な範囲で連携していくこととする。 韓国に関しては、個別の学校が日本植民地期の文書を保管している見込みが低いこと、一方で国家記録院が一定の学校文書を収集・所蔵しており、そのデジタルデータの利用が可能であること等、台湾とは資料状況がかなり異なることが判明してきた。今後は、既公開資料を手がかりとして対象地域を定めたうえで、実地調査を進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画において実施予定であった研究調査のうち、夏に実施した台湾での現地調査において、健康上の事情により研究分担者1名が参加することができなかった。計画全体には変更はないが、計画時に想定していた旅費に余剰が生まれ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究調査を補足する形で、次年度の海外調査の実施期間を当初の研究計画よりも長く設定することにより、滞在費として使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)