2016 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における官僚の選抜・昇進構造とセクショナリズムに関する教育社会史的研究
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16K13559
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Research Institution | St. Luke's International University |
Principal Investigator |
武石 典史 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (00613655)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 官僚 / セクショナリズム / 試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、近代日本における文官の人材配分がセクショナリズムに与えた影響を明らかにすることを課題とした。まず明治中期から昭和初期にかけて文官官僚の採用・昇進パターンがどのように変容していたのかを、大学卒業席次および高文席次と関連させながら分析した。それらをふまえつつ、大正後期以降の官僚組織内の諸集団の業績的特徴を検討し、当該時期のセクショナリズムの力学を考察した。具体的な作業を示せば以下の通りとなる。 (1) 『日本官僚制総合事典』をベースに、官僚の高文席次と東京帝国大学卒業席次のデータを入力し、分析の土台を準備した。 (2) 「大卒席次・高文席次」と「採用省庁および配属部署」の関係性、「大卒席次・高文席次」と「本省課長・局長以上ポストの歴任」、「採用省庁および配属部署」と「本省課長・局長以上ポストの歴任」の相関性を細かく分析し、突出した部局や集団の特徴を解明した。 (3) 「内政史研究資料」をはじめとする回想録群、新聞・雑誌記事をもとに質的な面から(2)の分析結果を裏付けた。並行的に、それらの資料内における「専門職」「専門性」をめぐる言説を整理し、「官僚の『専門職』認識の高まりが分化を生み、(2)の状況と結びつく形で官僚機構内の割拠性が強まった」との仮説の実証的検証を試みた。 (4)上記の(2)と(3)の作業成果を反映させながら、「人事とセクショナリズムの関係性」を分析・検討し、「官僚の選抜・昇進構造」と題する論文を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代日本の官僚における「高文席次」と「東大卒業席次」のデータ入力を遂行し、量的分析を行なうことができた。また、回顧録関係史料も網羅的に調査した。ただし、新聞・雑誌史料については部分的な調査にとどまったので、平成29年度以降に実施したい。 この成果は平成29年5月もしくは6月に論文として公表される予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度より分析対象が文官から武官に変わるが、資料調査活動を確実に実施しながら、精度を上げつつ成果としてまとめることができるよう、計画的に取り組む予定である。 なお、前年度に完全にカバーできなかった新聞・雑誌記事の収集、分析については継続的に行い、本研究全体の展望を切り開くこととしたい。
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Causes of Carryover |
本研究遂行に影響を与えるものではないが、「現在までの進捗状況」欄でも述べたように、結果として新聞・雑誌記事調査が部分的なものにとどまってしまった。 以上の理由により、使用額が計画と異なってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新聞・雑誌記事を広く収集するための費用とする。
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