2018 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における官僚の選抜・昇進構造とセクショナリズムに関する教育社会史的研究
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16K13559
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Research Institution | St. Luke's International University |
Principal Investigator |
武石 典史 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (00613655)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海軍将校 / 席次 / 昇進 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、海軍将校集団を学歴、昇進パターンから分析し、「官僚機構としての海軍」の特徴の考察を試みた。 海兵15期(1889年卒)から海兵61期(1933年卒)にかけての海軍将校の海兵卒業席次、海軍大学校卒業歴、ポスト配分を入力したデータベースを作成し、海軍将校の構造の分析を進めた。解明した点は以下のとおりである。 ①15期より一貫して、海大進学機会は海兵卒業席次上位層に開かれていた。その一方で、海兵卒業席次下位層からの海大進学は難しかった。 ②将官への昇進において海大卒の持つ意味が強まっていった。15期ー17期においては、海大卒の将官輩出率は67%、非海大卒は24%だったが、39-41期になると、前者が85%、後者が23%と両者の差が拡大した。さらに、海兵席次上位一割層に限ると、15期ー17期の海大卒71%、非海大卒54%だったのが、39-41期になると、前者が89%、後者が38%となる。海兵の席次上位という学歴だけで将官に任官できる可能性は低下していった。 ③昭和期にはいると海大卒の学歴のない大将は生まれなくなり、中央部の主要ポストも海大卒者の進出が顕著となった。 このように、官僚機構としての海軍は、昇進やポスト配分において、成績や学歴を重視する集団といえる。こうした傾向は、東大卒業席次及び高文席次が重視された文官官僚、陸士卒業席次と陸軍大学校卒の学歴が大きな意味を持った陸軍将校と同様のものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昭和期における武官(陸軍・海軍将校)と文官を対象に、政治力学・社会変動・専門職の三者をどこまで整合的に、あるいは対立的に関係づけることができるのかを検討する予定であったが、PCの不具合により、陸軍将校データベースの一部が破損したため、分析に遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元(平成31)年度は、本研究がこれまで取り組んできた武官と文官の分析を整理する。そして国際比較の視点を取り入れながら、成績主義に基づいた人材の選抜・配分(成績上位者を特定ポストに配置)が新たな「専門職」意識を生じさせセクショナリズムの要因の一つになり、システムの安定性を揺るがした、という仮説の検証を試みる。
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Causes of Carryover |
研究計画に沿って順調にデータベースを作成していたが、2018年11月頃からPCの動作が不安定になりはじめた。入力済 みのデータの一部に消失がみられ、かつ同PCを使用したデータ入力の継続が著しく困難となった。新たにPCを準備し、データを再入力する必要が生じた。このような事態は、研究計画立案時点では想定していなかった。上記のような事態に対応しつつ、研究計画の遂行をはかるために、延長を希望する。 なお、「次年度使用額」に関しては、旅費と消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)