2017 Fiscal Year Research-status Report
逆問題解析による分数階微分方程式を用いた血糖値変化の数理モデル
Project/Area Number |
16K13774
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯 祐介 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70203065)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 宏志 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00362583)
今井 仁司 同志社大学, 理工学部, 教授 (80203298)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 数値解析 / 数値計算 / 数理モデル化 / 分数階微分方程式 / 逆問題解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病に係る数理科学的な薬理研究として、血中のグルコースおよびインシュリン濃度の数理モデル化がある。いわゆる MINIMOD モデルではこれらに加えてインシュリンの効き方(insulin sensitivity)の3つが未知函数として数理モデル化されているが、MINIMOD Millenium モデルではグルコースとインシュリンの効き方だけが未知函数となる(1階)常微分方程式が提唱されている。本研究は、その改良版である分数階 MINIMOD Millenium モデルの数理解析を通して改良モデルの解析を行い、さらにより良い数理 モデルの提案を視野に入れている。 研究の第1段階として、Caputo 型の分数階非線型方程式の数学解析と数値解析を行い、数値計算法の確立と効率的な数値計算手法を提案することにあるが、この点では平成28年度と29年度に大きな成果が得られている。Caputo 型の分数階方程式を weakly-singular 核積分方程式として論じて数値解析理論を整備することは、研究協力者の寄与もあって平成28年度に大きな成果を挙げた。この成果は、本課題研究申請時に「最低限の期待される成果」と位置づけたものであり、この点では申請時の研究目標の一つは達成されたといえる。これを踏まえ、平成29年度は研究代表者の提唱する厳密(exact)性を優先する数値計算スキームと、当初から近似を行う他のスキームとの比較を数学解析の視点で行った。常微分方程式の数値計算法を数値積分公式との比較から検証することはこれ迄にも知られている通りであるが、この方法を形式的に分数階方程式にも適用すると、幾つかの計算スキームが考えられる。平成29年度はこの検証を海外研究協力者も含めて行ない幾つかの成果を得たが、その数値的検証は平成30年度の研究に持ち越した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項でも記述した通り、平成29年度末迄に Caputo 型の分数階非線型方程式の初期値問題について、その基礎的な数学解析を整備し、基本的な数値計算スキームの解析(理論数値解析)を整備することで、課題研究申請時に「最低限」と定めていた目標は達成された。この意味では本課題研究は「概ね順調に進展している」と判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度迄は理論研究が先行したため、理論的な成果は得られたもののその成果を「可視化」する数値データが余り得られていない。このため、最終年度の平成30年度には年度繰越をした予算を活用して計算環境を再整備し、提案したアルゴリズムの計算効率等を数値実験を通して検証したいと考えている。 一般に数理モデルを構築しようとする場合、いわゆる「微分則」から構成的に論じる方法と、観測データを利用した逆問題解析的なデータサイエンスによる方法が考えられる。この両者は通常の微分方程式では「入り口」の相違であり、現象の数理モデル化として大きな相違が生じるものではない。しかしながら、平成28年度に得られた数学的な成果を検証すると、課題研究所主対象である MINIMOD Millenium の分数階方程式版等は、この基本的な性質を有していないことが明らかになった。この点の検証は大きな課題であるが、数理科学的には「相違が生じる」ことに指摘に留まり、相違が生じることの可否は現実的なデータとの比較、あるいはこの数理モデルの解の実用上の役割など、多角的な視点からの検証が必要である。この大きな課題にどのように取り組むか、これはこの萌芽研究を今後どのように展開すべきかを論じることでもあり、平成30年度前半の一つの研究上の学術的課題である。
|
Causes of Carryover |
理論面での研究に成果があったために理論研究を重視したため、数値実験のための計算環境整備を先送りした。このために次年度使用の措置をとった。平成30年度には早々に計算環境を整備すると共に、研究成果の国際学会発表を当初予定よりも増やし、研究費の有効活用に一層留意する計画である
|
Research Products
(7 results)