2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of ab initio effective fragment potential for predicting thermodynamic properties of ionic liquids
Project/Area Number |
16K13928
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森 寛敏 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90501825)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有効フラグメントポテンシャル / 第一原理分子動力学 / イオン液体 / 混合溶液 / 過剰熱力学物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体は高イオン伝導の難揮発性液体であり,物性を化学制御できる。そのため,電池材料としてイオン液体の期待度は高い。イオン液体の能力を最大限引き出すには,その溶液構造の知見が欠かせないが、高精度な理論研究は少ない。例えば、イオン液体の溶液構造は主に古典分子動力学(MD)で論じられ,電荷移動相互作用は無視されてきた。一方,電子状態を露に考慮する第一原理MDでは,計算負荷的にイオン液体の遅い運動を追跡できない。本研究の目的は,イオン液体の熱力学的性質を高効率に予測する理論の開発である。イオン液体の分子間相互作用を簡素に表現する有効フラグメントポテンシャル(EFP)を開発し,その工学応用に挑んだ。 平成29年度は,前年度に確立したEFP-MDシミュレーションスキームを応用し,イオン液体および混合液体の熱力学物性の予測に挑戦した。これらの液体中には、いずれも、液体内に複数の化学種が存在する。このような化学種混合系において熱力学物性を再現するには、同種分子間相互作用に加え、異種分子間相互作用を、あらゆるコンフォメーションにおいて精密に見積もる必要がある。古典MDの分野で開発される力場は、ターゲット系について量子化学計算や物性実測データなどの情報を取得しておくことで、それらを再現するように試行錯誤して決定せねばならない。そのため古典MD法では、未知の分子ペアについて分子間相互作用を定量評価することは難しかった。一方、本研究で開発した EFP-MD 法では、「分子間相互作用は、相互作用している各分子の性格が色濃く反映されている」ことに着目した。分子間相互作用を予めパラメトライズされた解析ポテンシャルにするのではなく、各分子の波動関数でコンパクトに展開した表式を作っておけば、イオン液体を含む任意の混合液体系について、分子間相互作用を手軽かつ高精度に再現できることが分かった。
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Remarks |
本研究の推進に関連して、2件の受賞があった。1) 第8回日本学術振興会育志賞 物理化学シミュレーションと機械学習による機能性混合液体の理論設計, 2018年03月, 国内、2) 学生優秀発表賞第30回分子シミュレーション討論会, [C2mim]BF4イオン液体中で生成するCo(II)(OH2)4錯体周辺の溶媒和構造とソルバトクロミズムに関する理論的研究 , 2016年11月, 国内
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