2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14187
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 雄介 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80466333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音響情報・制御 / 光音響効果 / レーザ / プロジェクション / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光音響効果を用いた音源生成の理論を確立し、最終的にはそれを気体中に適用することで任意の音源を再生可能な空中音源の生成を目指している。本年度は、理論・シミュレーション・実験による基礎検討を重点的に行った。具体的には、以下の項目について研究を進めた。 (1)基礎理論の検証:A. Rosencwaigらの固体光音響理論とH. D. Arnoldらのサーモホンの理論に基づき、固体の熱容量、熱伝導率と再生される音波の関係を検証した。特に、固体光音響理論とサーモホンの理論の間にある、音圧と周波数に関する矛盾点について、統一的な理論の構築に向けた理論的検討を行った。 (2)数値解析を用いた検証:上記の先行研究における理論は単純化されたモデルを用いているので、それらに基づいて新たに導出した理論もいくらかの単純化を伴う。そこで、単純化の度合いに応じていくつかの定式化を行い、それらを用いシミュレーションを行った。同時に、音響系および伝熱系を連成したより複雑なモデルに対してもシミュレーションを行った。これにより、照射する固体の熱容量や熱伝導率と再生音圧の関係などについて、音の再生に最適な条件があることを確認した。 (3)実験による検証:数値解析と並行して、様々な特性を有する物質に機械的にチョップしたレーザ光を照射し、小さい音圧であるが音の再生を可能とした。その音響的・熱的応答の計測を行い、発生する音の音圧と周波数の関係、照射する固体の熱容量や熱伝導率との関係を調べた。シミュレーション結果との比較を行い、妥当性について検証した。さらに、我々がこれまで開発してきた位相シフト干渉法と偏光計測技術を組み合わせた空気の屈折率変調を定量的かつ高速高空間分解能で計測可能な計測器を用いて、空気の密度変化の様子を計測、可視化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り本年度は主に理論・シミュレーション・実験による基礎検討を重点的に進めた。その結果、固体光音響理論とサーモホンの理論の間にある、音圧と周波数に関する矛盾点存在することを確認し、周波数と音圧が正の相関を持つことが確認できたことよりサーモホンの理論の方が状況を良く説明していることが確認された。シミュレーションと実験結果より、熱容量と音圧の関係に関しては理論通り熱容量が小さいほど音圧が大きくなることが確認できた。一方で、熱伝導率はそれらの理論と異なり、単純に熱伝導率が小さいほど音圧が大きくなると言う結果は得られず、熱伝導率と音圧の関係性には最適値が存在し、熱伝導率が大きすぎても小さすぎても音圧が小さくなってしまうことを示した。固体の光音響効果においては熱容量が小さい固体を選択することが第一であり、ついで熱伝導率の最適値を探ることが必要となってくると考えられる。さらに、本研究ではマイクロホンでの計測が困難な場合もあることがわかり、我々がこれまで開発してきた位相シフト干渉法と偏光計測技術を組み合わせた空気の屈折率変調を定量的かつ高速高空間分解能で計測可能な計測器を用いて、空気の密度変化の様子を計測、可視化を検討した。 以上、光音響効果に関する理論的検討、数値解析を用いた確認、基礎的な実験など、当初予定していた実施計画をほぼ達成するとともに、位相シフト干渉法と偏光計測技術を組み合わせた空気の屈折率変調を定量的かつ高速高空間分解能で計測可能な計測器を用いて、空気の密度変化の様子を計測、可視化なども実施し、それら成果を国際会議等で発表した。したがって、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、初年度の成果に基づき、物体表面を音源位置とする所望の音響信号の再生を目指す。まず、初年度に得られた理論的および実験的知見に基づき対象とする物質を決め、さらに変調方式の違いが光音響効果に与える影響や音の再生に最適な条件を明らかにし、実験によりその妥当性を確認する。さらに、任意の音源を再生可能なシステムを構築し、音響プロジェクタなどへの応用を検討する。 (1)任意の音源を再生可能なシステムの構築:音響信号により光を変調することで、非定常な任意の音源を再生することを目標とする。照射光の変調にはEO変調器等を用いる。まず、変調方式の違いが光音響効果に与える影響を明らかにし、可聴音の再生に適した変調方式を決定する。次に、光を照射する物質との関係や、相変化を活用する場合の方法など、光音響効果に関わる様々な要因を同時に考慮することで、音の再生に最適なシステムを構築する。 (2)音源のプロジェクション:光を照射した場所に音源を生成する、いわば音源のプロジェクションを実現する。電気的に制御したミラーによりレーザ光照射位置を制御することで移動音源を生成するシステムを構築し、システムとしての評価を行う。
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Causes of Carryover |
当初、本研究を進めるに必要な実験に使用できる短波長高出力レーザを購入する予定であったが、理論検討をしている段階でコンピュータ制御し様々な条件での利用が可能なものを用意した方が良いとの結論に至り、個別部品を収集し自作する方針に切り替えた。そのため、物品費の支出を抑えることができ、成果発表のための旅費に充当した。また、本年度の成果の発表を、2017年8月に開催される国際会議にて発表することが確定している。そのための旅費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の成果の発表を、2017年8月に開催される国際会議にて発表することが確定している。そのための旅費として次年度使用額を使用する予定である。また、研究成果を幅広く発表していく予定であり、成果発表のための旅費、論文投稿料などの費用が必要であり、これら費用の支出を計画している。さらに、次年度は、実験を中心に研究を行予定であり、物品費として実験環境構築のための消耗品の購入が増加すると見込まれている。その費用の支出も計画している。
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Research Products
(5 results)