2016 Fiscal Year Research-status Report
神経機能代替を利用した昆虫の飛行制御システムの同定
Project/Area Number |
16K14192
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 規泰 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (70436591)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆虫 / 羽ばたき飛行 / ジャイロ / 飛行制御 / 筋肉 / サイボーグ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,スズメガのジャイロセンサである触角基部のジョンストン器官を代替するためのMEMS慣性センサの特性を検証した.まず,超小型の基板を製作することで,市販のセンサモジュールの1/10の重量である40 mgを達成し,昆虫への重量負担を大幅に軽減した.次に,自由飛行中に慣性センサから送られる情報の精度を検証するために,高速度カメラとの同時計測を行い,それぞれの三次元運動(ピッチ,ロール,ヨーの角速度)を比較した.その結果,慣性センサは120 Hz以上のサンプリングレートで,高速度カメラによる画像解析結果と同等の精度で運動情報をリアルタイムに得られることを明らかにした.そして,次年度に向けての予備実験として,センサの入力に対する出力に相当する筋肉の探索を行った.第一の候補として腹部の上下運動を支配する背縦走筋を選択し,自由飛行中の電気刺激実験を行った. また,本年度の研究結果より,小型軽量な慣性センサを昆虫に搭載することで,高額な高速度カメラや,時間を要する画像解析,そしてカメラの視野やメモリに制限されることのない運動計測が可能であることが示された.この手法の汎用性を示すために,体重1 gのスズメガに対し,0.3 gと軽量なチョウ(アサギマダラ)に対して同様の計測を行った結果,チョウの羽ばたき飛行の特徴であるピッチの大きな変動を捉えることができた.この手法の制約として,有線計測であることと,胴体の運動計測のみという点があるが,より簡単に大量の運動データを取得できる手法として,昆虫飛行のバイオメカニクスに対する貢献が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,初年度の目標である慣性センサの特性検証を行い,研究計画に必要な仕様を満たすことが証明できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
慣性センサからの情報を元に電気刺激を行う筋肉を選択する.そのために,候補となる胸部と腹部を結ぶ背縦走筋や,操縦筋の自由飛行での活動計測や電気刺激実験を行い,姿勢の操作が可能であるか検証する.そして,昆虫に搭載した慣性センサの情報計測と筋肉への電気刺激を結ぶアルゴリズムを検討する.課題として,単なる電気刺激では十分な操作量が得られない可能性が挙げられる.そのために,候補となる筋肉の自由飛行での活動を詳細に解析し,他の筋肉との関連も考慮して最適な刺激パターンを明らかにする.
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Causes of Carryover |
自由飛行実験を行うための飛行環境を整備するために,予備実験として複数のサイズの仮アリーナを製作し,最適なサイズの検討を行ってきた.その結果,ジョンストン器官のジャイロとしての機能を外科的に失わせた個体では,飛行が不安定化しテストした環境では壁に衝突するなどして十分な計測ができない可能性が分かり再検討する必要が生じた.このため,既存のサイズで実験可能な項目に優先して取り組み,アリーナの製作を次年度に実施することが最善と判断した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にて,実験に必要なアリーナの製作を行い,そのために必要な機材費を,前年度の未使用分で賄う予定である.
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Research Products
(4 results)