2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K14293
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上田 隆雄 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (20284309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コンクリート / アミノ酸 / 塩害 / 鉄筋腐食 / フライアッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸の一種であるアルギニンを添加した鉄筋コンクリート供試体を作製し,塩水浸漬試験を実施した。セメントとしては,普通セメントと高炉セメントを用い,普通セメントの供試体の一部には細骨材代替で20%のフライアッシュを混和した。本研究結果を要約すると以下の通りである。 1. 今回の配合条件では,アルギニンの添加によって圧縮強度が若干低下したが,細骨材代替でフライアッシュを混和した場合には,アルギニンの添加によって材齢28日から120日への強度増加率が上昇した。 2. 今回の配合条件では,材齢91日のフライアッシュ混和モルタルのCa(OH)2含有率は,アルギニンの添加によって大きく減少したが,アルギニン添加の有無によるモルタル細孔径分布の変化は小さかった。 3. RC供試体の塩水浸漬と乾燥の繰り返し試験の結果,フライアッシュを混和した配合および高炉セメントを用いた配合の供試体でアルギニンの添加による鉄筋分極抵抗およびコンクリート抵抗の増加が認められた。すなわち,アミノ酸を添加した供試体は全体的に鉄筋腐食に対する抵抗性が大きい傾向を示した。特にフライアッシュを細骨材代替で混和した供試体で防食効果が大きかった。 4. モルタル細孔溶液のOH-濃度はアルギニン添加により上昇し,Cl-濃度は低下した。その相乗効果によるCl-/OH-モル比抑制効果はフライアッシュを混和した配合が最も大きかった。このような細孔溶液イオン組成の変化が鉄筋防食効果の増進に寄与したものと推定された。 5. FA配合およびBB配合では,モルタル細孔溶液中のアルギニンの分解進行が抑制される傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸の一種であるアルギニンを添加したコンクリートのフレッシュ性状および硬化性状などの基礎的物性値について,検討を行い,適切な配合条件を選定することができた。また,細孔構造の変化および細孔溶液中のイオン組成の変化などを測定することで,アルギニン添加の物理的・化学的影響について考察を加えている。 コンクリート中の鉄筋腐食性状についても,電気化学的鉄筋腐食指標から定量的に評価を行っており,アルギニンを添加することで鉄筋防食効果が期待でき,特にフライアッシュを混和した配合で,そのような効果が高いことを明らかにしている。このような効果は,モルタル供試体の実験結果ともよく整合しており,アルギニン添加が鉄筋防食効果向上に寄与するメカニズムを明確にすることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作製した供試体について,長期的な劣化促進試験を実施し,鉄筋腐食挙動を把握する。今年度中にコンクリート中の鉄筋をはつり出し,実際の鉄筋腐食状態と,電気化学的腐食指標との相関性を確認する。 今年度は,新たなシリーズとして,自己治癒性能を把握するための供試体を作製する。供試体としては,曲げ載荷が可能となる鉄筋コンクリート供試体を作製し,曲げ載荷によって微細なひび割れを導入した後に自己治癒促進養生を行い,経時的なコンクリートの電気抵抗の変化および相対動弾性係数の変化から,コンクリートの自己治癒性能を評価する。 最終的に,アミノ酸を添加したコンクリートおよび補修材料の設計手法について提案することを目標とする。
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Research Products
(2 results)