2016 Fiscal Year Research-status Report
磁力分離可能な高機能放射性セシウムイオン吸着剤の創製
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16K14461
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
堀河 俊英 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (90380112)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セシウム吸着 / プルシアンブルー / 磁性体 / 磁性分離 / 放射性セシウム / 福島第一原発事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発事故から2017年春で6年が経過したが、依然として放射性物質を含む汚染水は増加し続け、その処理法などが議論されている。汚染水には放射性セシウムイオンが大量に溶存しており、この除去を効率的に行う必要がある。 チェルノブイリ原発事故後に多くの研究者が放射性セシウムイオンの吸着にプルシアンブルー(PB)が有効であることを報告していたことから、福島第一原発事故後にも大変大きな期待がされた。しかしながら、一般的に合成されるPB粒子サイズがナノオーダーであることから放射性セシウムイオンを吸着し、吸着飽和に達したPB粒子を効率良く汚染水から分離回収することが大変困難であることから実際に適用するには至っていない。実際に放射性セシウムイオン吸着分離に適用するためには、PB粒子の何らかの固定化技術が求められ、ポリマーにPB粒子を練り込み吸着布などとして使用する方法が現在取られている。しかし、それらの方法も吸着飽和に達した吸着布の処理法が問題となる; 吸着布が布状であるため含水性が高く脱水の際に吸着したセシウムイオンも脱着する恐れがある、ポリマーに含有できるPB量が小さいため嵩効率が非常に低い、など挙げられる。 本研究では、申請者が有する磁性ナノ粒子の炭素材料への固定化技術を応用し、PBナノ粒子の固定化と融合させることで、磁力により容易に回収可能な球状PB含有吸着剤を創製を試みている。現時点で、PB粒子と磁性ナノ粒子の固定化に成功し、調製した材料のセシウムイオン吸着特性について調査中であるが、PB粒子の有するセシウムイオン吸着能を低減することなく固定化できた。今後はさらにPB粒子量、磁性体量を最適化する。 この材料は、吸着布に比べ球状粒子であるため水切れが良く、また、溶液からの粒子回収に磁力を利用するため機械的な遠隔操作が可能となり、作業員の被曝の危険性を大幅に下げることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究成果の一部を下記の通り、国内学会4件に報告した。 国内学会:(1)白井 大輝, 小西 駿介, 堀河 俊英, 外輪 健一郎, アルカンタラ アビラ ヘスース ラファエル : プルシアンブルー固定化吸着剤の調製およびそのセシウム吸着特性, 化学工学会 第48回秋季大会, 2016年9月、(2)白井 大輝, 小西 駿介, 堀河 俊英, 外輪 健一郎, アルカンタラ アビラ ヘスース ラファエル : PB@RF resinの調製およびそのセシウム吸着特性, 第10回中四国若手CE合宿, 2016年9月、(3)白井 大輝, 小西 駿介, 堀河 俊英, 外輪 健一郎, アルカンタラ アビラ ヘスース ラファエル : プルシアンブルー固定化球状粒子の調製方法の検討, 第3回 海水・生活・化学連携シンポジウム, 2016年10月、(4)白井 大輝, 小西 駿介, 堀河 俊英, 外輪 健一郎, アルカンタラ アビラ ヘスース ラファエル : プルシアンブルー固定化球状吸着材の調製方法の検討およびそのセシウム吸着特性, 第30回 日本吸着学会研究発表会, 2016年11月 以上のように、順調に進展し成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は、平成28年度までに得られた知見をより詳細に精査し、実用化に耐えられる磁力分離可能な高機能放射性セシウムイオン吸着剤の調製に係る最適調製条件を検討する。 調製条件として、複合化するPB粒子量、磁性体量、さらに調製する粒子形状(最終目標は真球状粒子)があげられ、すでに平成28年度の後半から取り組んでいるところである。粒子形状については、申請書に挙げた過去に報告した乳化重合法(Horikawa et al, Carbon 42, 169-175, 2004)が本系に適用可能であることを確認したことから、より効率的なPB粒子、磁性体の複合化条件とそれに適した手順を構築する。 調製した材料のセシウムイオン吸着試験を行い、その吸着剤性能を評価し、より高精度な吸着剤が開発できるよう努める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた以上に効率よく目的材料調製の開発が行えたことで、無駄な調製試薬を消費することなく研究が遂行できた。また、既存の調製器具の一部を材料調製の開発に流用できたため、予算を次年度の実用に向けた材料開発に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、実用化に向けた材料調製・開発をを行うための器具・試薬類に平成28年度残額を投入し、より効率的に材料の開発に取り組む。 具体的には、PB粒子、磁性体粒子を真球となるように固定化するための製造装置、また、調製後試料の吸着試験を効率よく行うためのシステム構築に残額を使用する。
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Research Products
(5 results)