2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K14493
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
根来 誠司 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (90156159)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナイロン / 6-アミノヘキサン酸 / 代謝経路 / Arthrobacter / アジピン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイロンモノマーユニットの6-アミノヘキサン酸の代謝経路について検討した。まず、4-アミノ酪酸(GABA)代謝経路との類似性から、Ahxはアミノトランスフェラーゼ(NylD)によりアジピン酸セミアルデヒドに変換され、その後、デヒドロゲナーゼ(NylE)によりアジピン酸へと変換されると予測した。NylD活性は、Ahxをアミノ基供与体とし、αケトグルタル酸、ピルビン酸、または、グリオキシル酸をアミノ基受容体として酵素反応を行い、生成物をTLCで検出した。NylE活性は、化学合成したアジピン酸セミアルデヒドを基質とし、NAD+又はNADP+を補酵素として反応させ、340nmの吸光度の増加速度から確認した。Arthrobacter sp. KI72の全ゲノム配列を決定後、NylDは4-アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼの配列を、NylEはNADP+依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼの配列をクエリとして、相同性遺伝子を探索した。NylDについては、KI72ゲノム中に2種類の相同性遺伝子が認められたため、各候補遺伝子をPCRで増幅し、大腸菌でHis-tag融合タンパク質として精製した。反応産物をTLCで検出したところ、NylD1について、ピルビン酸からアラニン、グリオキシル酸からグリシンへの変換活性が検出された。一方、NylEについては、KI72ゲノム中に10種類の相同性遺伝子が認められた。6種類の酵素について、同様に、His-tag精製後、アジピン酸セミアルデヒドからアジピン酸への変換活性を検討した。その結果、NADP+を補酵素として変換活性を有する酵素を4種類同定した。以上の結果から、6-アミノヘキサン酸は、まずNylDによりアジピン酸セミアルデヒドへ、次いでNylEによりアジピン酸へ変換されると結論した。さらに、NylDとNylEを共役させた活性測定系についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石油資源に依存した化成品の合成は、将来の資源枯渇の観点から問題視されている。近年、バイオ資源からの化成品生産、特に、代謝工学を活用した合成生物学的な改良が重要視されている。ナイロンモノマー代謝酵素系については、これまで、明らかにされていなかったが、本研究で、大腸菌でモノマー代謝関連遺伝子群を高発現させ、得られた酵素を用いた生化学的研究から、6アミノヘキサン酸が、アミノ基転移により、アジピン酸セミアルデヒドを経由して、アジピン酸へ代謝される経路を実証することに成功した。この結果は、バイオ資源からの6ナイロンモノマーの生産へと発展できる可能性も提示しており、技術革新に繋がる可能性が期待できる。従って、本年度の研究目標は、概ね、達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナイロンが生物作用を殆ど受けない要因として、ⅰ)ナイロンユニットを認識できる酵素が生物界に殆ど存在しないこと、ⅱ)ポリマー鎖同士が強固な水素結合で結合しているため、一部のアミド結合が切断されても、会合体からのオリゴマーの離脱が進まないことが挙げられる。従って、今後は、ナイロンの酵素分解を効率化するために、ⅰ)分解酵素の高機能化、ⅱ)モノマー化が容易なポリマーの探索、ⅲ)ポリマーを溶解する有機溶媒・イオン液体中での反応などのアプローチを連携させたシステムの構築を目指す。特に、有機溶媒中での酵素反応は、化学処理と酵素処理の連携を容易にする。本研究では、ナイロン分解酵素(NylC)を用いた反応を工場レベルのリサイクル工程へ組み込むことが可能であるかについて、企業研究者と情報交換を行い、適切な反応条件の選定を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究では、1.ナイロンモノマーの代謝経路の決定、2.合成生物学的手法を用いた不要ナイロンからの有用物質への変換、3.バイオマスからのナイロンモノマーの生産を目指しているが、そのためには、分解に関与する微生物の全ゲノム配列の決定、および、推定遺伝子産物の酵素機能の確認が必要である。遺伝子産物の機能を確認するためには、基質となる想定代謝産物の化学合成が重要であるが、現時点では、代謝物質の特定には至らなかった。特に、化学合成には多額の経費を要することから、より詳細な検討後、次年度にこれを実施する必要性があった。来年度の配分経費のみでは、その実施が困難なため、本年度の残額を充当する必要性があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分解に関与する微生物の全ゲノム配列の決定、および、基質となる代謝産物について、詳細な検討後、その仮説を実証するため、想定物質の化学合成を行う。この物質の化学合成については、多額の経費を要する。さらに、新たなナイロン分解性の微生物の全ゲノム配列決定についても、高額な消耗品経費を必要とすることから、次年度(H29年度)の配分予算に加え、前年度の予算を合算して実施する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Mutations affecting the internal equilibrium of the reaction catalyzed by 6-aminohexanoate-dimer hydrolase2016
Author(s)
Negoro S, Kawashima Y, Shibata N, Kobayashi T, Baba T, Lee YH, Kamiya K, Shigeta Y, Nagai K, Takehara I, Kato D, Takeo M, Higuchi Y
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Journal Title
FEBS Lett
Volume: 590
Pages: 3133-3143
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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