2016 Fiscal Year Research-status Report
偏光変調分光法を利用したトカマク非誘導生成時の電子速度分布関数計測
Project/Area Number |
16K14527
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
四竈 泰一 京都大学, 工学研究科, 講師 (80456152)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トカマク / ECH / 電子速度分布 / 分光 / 偏光 / 変調法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ECHを利用したトカマク非誘導生成時の電子速度分布時間発展を計測することを目的として,ヘリウム原子発光線の偏光観測にもとづく電子速度分布計測法の開発に取り組んだ.研究の初年度である本年度は以下の2課題を実施した.
(1)高精度・高時間分解での偏光計測が可能な偏光変調分光システム開発:集光系(光弾性変調器(PEM)1台,λ/4板2個,直線偏光子1個,対物レンズ1個),光ファイバ,分光器,光電子増倍管からなる単一波長でストークスパラメータI, Q, Uの計測が可能なシステムを先行研究で開発した.このシステムに対して,以下の(a), (b)の改造を加えた.(a)紫外から近赤外域の任意波長の発光線に対して全てのストークスパラメータI, Q, U, Vを計測するために集光系をPEM2台,直線偏光子1個,対物レンズ1個からなる光学系に変更した.(b)光量損失を低減するために分光器と光ファイバの接続部分にFマッチング光学系を導入した.実機に比べて発光強度が1桁程度小さいヘリウムDCグロー放電管からの発光を計測し,発光強度が比較的大きい23P-33D線(588 nm),21P-31D線(668 nm)に対しては,時間分解能10 msの場合にストークスパラメータを誤差1%以下で計測できることを確認した.
(2)基礎放電プラズマ実験装置を用いた電子速度分布推定の原理検証実験:トカマク生成時に近いパラメータのプラズマを生成可能なカスプ磁場中のECR放電装置を用いてヘリウム原子発光線の偏光を計測した.ヘリウム圧力を4.8-67 mPaの範囲で変化させながらヘリウム原子21P-31D発光線(667.8 nm)の偏光を計測した結果,23 mPa以下の条件でECR面付近での磁場ベクトルに垂直な方向の直線偏光が観測された.偏光度は圧力の低下と共に増加し,4.8 mPa時に約8%に達することが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H28年度に予定していた上記の課題(1), (2)のうち,課題(1)は計画段階では信号S/N比を増加させる改造のみを予定していたが,これに加えて波長範囲を拡大させる改造も実施した.このため当初計画以上に進展して完了した. 一方,課題(2)は,当初計画では複数の先行研究で偏光が報告されていたDCグロー放電管を用いて実験を行う予定であった.しかしながら,実験装置を準備し,圧力20-100 Paのヘリウム放電中でヘリウム原子21P-31D発光線(668 nm)の計測を試みた結果,誤差を上回る偏光を観測することができなかった.これは,使用した放電回路の制約により電流を2 mA程度までしか流すことができなかったため発光強度が小さく,信号のS/N比を十分大きくできなかったことが原因の可能性がある.この結果,偏光度の計測下限が約3%となり,これ以下の偏光が生じていた可能性もあるがその検出が難しかった.そこで実験装置をより高電力かつ低圧力のカスプ磁場中のECR放電装置へと変更して再度実験を行い,低圧条件下で21P-31D発光線の偏光を観測することに成功した.以上のような経緯を辿ったため,計画段階では本年度に行う予定であった複数発光線の計測と電子速度分布の推定は次年度に実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は,開発した計測法をトカマク実機に適用することである.しかしながら,実機の複雑な条件下での計測を成功させるには,事前に基礎実験装置を用いて十分に検証実験を行うことが不可欠である.また装置内の反射光や窓材の複屈折といった技術的な誤差要因を定量化し,その対策を確立しておくことも必要である.このような観点から,H29年度は以下の3課題の実施を予定している.
(1) 前年度に偏光計測に成功したカスプ磁場中のECR放電装置を利用して計測法の原理検証実験を継続する.同一条件の複数放電を利用し,紫外から可視域に存在する複数のヘリウム原子発光線の発光強度,偏光度,偏光方向を計測する.計測量から電子速度分布を推定するために先行研究で開発されたPACRモデルを利用する.このモデルは,原子励起準位の占有密度に加え,磁気量子数の正負に対して対称な磁気副準位密度の偏り(アライメント)まで考慮した衝突輻射モデルである. (2) (1)の実験と並行して反射光を抑制するためのビューイングダンプの設計および窓の複屈折評価法の開発を進める.ビューイングダンプには反射率1%以下のタングステンファズ材を使うことを計画しているが,プラズマとの接触に伴ってファズ構造が壊れる可能性があるため,放電実験を通して反射率の経時変化を実測する.性能劣化が顕著な場合は,反射率は大きくなるがより強固な構造のビューイングダンプを採用する.また,実験時に使用する合成石英窓は製造時の残留応力によって複屈折が存在する可能性がある.窓を透過させた完全直線偏光を計測し,偏光状態の変化から窓の複屈折をその場評価する方法を確立する. (3) 開発した計測システムを九州大学QUEST装置へと移設し,ヘリウムを添加した水素放電を用いてECHによる非誘導生成時の偏光計測と電子速度分布推定を試みる.
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Causes of Carryover |
経費の端数が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度計画への影響は無い.
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Research Products
(7 results)