2016 Fiscal Year Research-status Report
がん化耐性齧歯類ハダカデバネズミ特異的ながん化抑制バリアの形成メカニズム
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16K14602
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 恭子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (80583062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坊農 秀雅 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイエンス統合データベースセンター), ライフサイエンス統合データベースセンター, 准教授 (20364789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハダカデバネズミ / 細胞老化 / ARF / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
長寿・がん化耐性齧歯類ハダカデバネズミ(Naked Mole-Rat, NMR)においては、がん抑制遺伝子ARF(Alternative Reading Frame)の発現を抑制すると細胞老化が誘導される(ASIS, ARF suppression-induced senescence)。ヒトやマウスの細胞においてARFの発現を抑制した場合には細胞老化は誘導されず、むしろ増殖シグナルを抑制できなくなることが知られており、そのことを反映するように実際多くのがんでARFの異常が報告されている。これらのことからASISは、NMRのがん化耐性の原因になっている可能性が考えられる。これまでに、ASISによって細胞老化した細胞では、INK4aを含むINK4ファミリーやp21などのCIP/KIPキナーゼの発現亢進が認めらないことが明らかとなっていた。しかしながら、細胞老化のフェノタイプが明確に現れる以前においても、これらの遺伝子の関与がないのかは不明であった。そこでARFをノックダウンしてから細胞老化が誘導されるまでの期間で、NMR線維芽細胞の経時的なサンプリングを実施し、ASIS初期に変動するタンパク質およびmRNAの発現解析を行った。その結果、INK4aやp21といった既知の細胞老化誘導因子は、ARFノックダウン後に一過的な発現亢進も認められず、ASISにおいては新規の細胞老化誘導因子が関与している可能性が強められた。この因子の探索のため、経時的にサンプリングしたサンプルからmRNA-seqを実施し、得られた結果についてGene Set Enrichment Analysisを行った。その結果、DNA傷害など従来知られている方法によって誘導される細胞老化とは、全く異なる遺伝子群の発現が亢進および抑制されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経時的な遺伝子発現解析によって、ASISの非常に特徴的な細胞老化の様相が明らかとなっており、さらにASISの原因として考えられる候補遺伝子のリストも作成することが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
ASISの経時的な遺伝子発現解析から得られた結果をもとに、ASISの原因遺伝子を同定するための実験およびASISによって引き起こされる細胞老化の意義について、引き続き解析を行っていく。
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Causes of Carryover |
必要な消耗品について複数業者から相見積もりを取ったところ、予定していた金額より安い価格で購入することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ASISの原因遺伝子を同定するための実験およびASISによって引き起こされる細胞老化の意義の研究が発展しており、購入が必要な分子生物学的試薬・細胞培養用試薬が増加する予定であるため、消耗品費に組み込んで使用する。
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Research Products
(5 results)