2016 Fiscal Year Research-status Report
エマルジョンを利用したメタゲノミクスのための次世代型ゲノム再構築技術の開発
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16K14646
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
関口 勇地 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20313570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ディーター トゥールース 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (00598485)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタゲノム解析 / ゲノム解析 / 未培養微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境や人工生態系には多様な未培養微生物群が存在しており、その機能の多くは未知なままである。その遺伝情報にアクセスするため、メタゲノム情報から個々の微生物群のゲノム情報を抽出、再構築するためのビニング技術の開発が進められている。しかしながら、それらビニング技術はメタゲノム情報を所得した後計算機上でゲノム断片を再分類するため、それに付随する様々な問題が存在する。その問題を回避するため、本研究課題ではメタゲノム情報を得る際、各塩基配列情報に対し、それが由来する微生物の系統分類情報を物理的に付加する新しい技術を提供することを目的とした新規技術を開発することを目指した。本課題では、1) エマルジョン技術を利用した、16S rRNA遺伝子と他のゲノム断片との融合技術の確立、2) 16S rRNA遺伝子配列に基づきゲノム断片をグループ化する解析スクリプトの作成、3) 実環境試料に対する開発技術の適用を行い、最終的に環境試料より未培養微生物群を代表するゲノム情報の取得を実施する。平成28年度は、エマルジョン技術を利用した、16S rRNA遺伝子と他のゲノム断片との融合技術の確立(課題1)、及び16S rRNA遺伝子配列に基づきゲノム断片をグループ化する解析スクリプトの作成(課題2)を実施した。課題1では、16S rRNA遺伝子の一部と他のゲノム断片が融合したキメラDNAを作製する工程の開発に注力した。このキメラDNAの生成には、エマルジョン技術を利用し、一つの液的に1細胞の原核微生物をトラップした後、その液滴中で16S rRNA遺伝子の増幅と、その上流もしくは下流に存在するランダムなゲノム断片を付加する技術開発の検討を実施した。また、課題2では、得られるシークエンスデータから付加してある16S rRNA遺伝子配列に基づきゲノム断片情報を抽出、アセンブルするためのパイプラインを整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題1の エマルジョン技術を利用した、16S rRNA遺伝子と他のゲノム断片との融合技術の確立では、本課題の実験的技術の確立を実施した。16S rRNA遺伝子の増幅とその上流もしくは下流10-20 kb程度に存在するランダムなゲノム断片を付加する技術開発の検討は完了し、その実施が可能なプロトコルを完成させた。一方、当初の目的であった、エマルジョン技術を利用した16S rRNA遺伝子と他のランダムなゲノム断片との融合技術については様々な技術的課題が存在することが判明し、それらの課題を回避するための新たな技術開発を実施中である。総じて、本課題は当初の目標の60%程度の達成率であると考えており、平成29年度に全ての技術的課題の克服を目指す予定。一方、課題2の16S rRNA遺伝子配列に基づきゲノム断片をグループ化する解析スクリプトの作成では、概ね計画通りの進展がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、課題1を引き続き実施し、16S rRNA遺伝子と他のランダムなゲノム断片との融合技術については様々な技術的課題を解決するための新たな技術開発を実施する。その上で、メタゲノム情報を得る際、配列が由来する微生物の系統分類情報を物理的に付加する新しい技術を確立し、論文等で公表することを目指す。また、課題2の 16S rRNA遺伝子配列に基づきゲノム断片をグループ化する解析スクリプトの作成について、平成28年度に引き続きデータ解析用の解析パイプラインを確立する予定。さらに、実環境試料に対する開発技術の適用(課題3)を目指し、課題1-2で開発した実験的技術と生物情報学的技術を利用し、実環境中の未培養微生物群を代表するゲノム情報の取得を行う予定。
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Causes of Carryover |
課題1では様々な技術的課題が存在することが判明し、それらの課題を回避するための新たなアイデアの検討や技術開発を実施する必要があり、当初の計画通りに予算執行が進めることができなかった。本課題は当初の目標の60%程度の達成率であると考えており、その分のシークエンシング等の実施を平成29年度以降に見送ったことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、課題1を引き続き実施し、16S rRNA遺伝子と他のランダムなゲノム断片との融合技術については様々な技術的課題を解決するための新たな技術開発を実施する。現時点で技術的課題は概ね解決する方向であり、平成28年に実施する検討は29年度にまとめて実施するため、平成29年度分として請求した助成金と合わせ全ての予算を加速して全額使用する予定。
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