2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K14703
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオイメージング / 個性 / 細胞性粘菌 / 情報理論 / アンサンブル学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌は飢餓状態に近くなるとおよそ1万細胞の集団のなかから、cAMPを発現しリーダーとなる細胞が10個程度出現し、同時にその細胞に追随するフォロアー細胞といった役割分化が生起することが知られている。しかしながら、それらの因果的な関係性は不明で、リーダー細胞、フォロアー細胞の同定もcAMP発現がある一定の閾値を超えてパルス状に発現する時期の順序に基づいて行われている。我々は、手始めにパルスの発現時期の順序に基づいて同定された、リーダー細胞およびリーダー細胞によるcAMP発現を受けて応答する(と解釈される)早期フォロアー細胞、晩期フォロアー細胞のcAMPのパルス列の系列データに基づいて、(因果の必要条件である)情報量の流れ、およびその流れが一方向的であるかを移動エントロピーに基づいて定量できるか否かを考察した。リーダー細胞から早期フォロアー細胞への一方向的な情報の流れが定量できることなどが明らかとなった。
ラマン顕微分光イメージングは、非侵襲的で分子標識を必要としない生細胞イメージング技術である。そのイメージには単一細胞における分子振動の空間およびスペクトルの情報が含まれているため、細胞の個性を評価するうえで有用な方法論である。我々はラマン顕微分光イメージングデータから、細胞状態を識別するうえで有用となるラマンシフトを抽出する方法論をアンサンブル学習の一つであるランダムフォーレストなどに基づいて開発した(投稿予定)。実際に、非アルコール性肝疾患のラットモデルの組織切片のラマン画像に対して適用し、病態の変容を予測できることを示唆することに成功した。
この他、計測データの背後に存在するエネルギー地形の時間スケール依存性を定量することを可能とするデータ駆動型の解析理論などを新規に開発し、その有用性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞性粘菌の研究成果などは計画班代表として申請中の新学術領域「シンギュラリティ生物学」のヒヤリング採択に繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はミクロからマクロまでを繋ぐトランススケーラブルな画像データに関して自動的に細胞をトラッキングする画像解析技術を探索・開発し、統計的信頼性を飛躍的に向上させる。また、cAMP発現量の経時変化に加えて位置情報との関係性を解析する。
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Causes of Carryover |
当初、ワークショップを開催する予定であったが、リーダーフォロアー細胞の解析手法の開発研究の進捗状況を鑑みて関連する国内外のシンポジウムに最終年度発表し、そこで情報収集、研究のレビューを受けるほうが効果的であると考えたため。
研究成果発表のための旅費およびワークショップ開催に充当する予定である。
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