2017 Fiscal Year Annual Research Report
Flagellar movements regulated by environmental proton dynamics
Project/Area Number |
16K14775
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
広橋 教貴 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90376997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 容子 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(移行) (60431342)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 精子 / プロトン勾配 / pHイメージング / 走化性 / 受精 / 頭足類 / 鞭毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子が環境のプロトン濃度の変化を感じて正確に鞭毛運動を変換するメカニズムを解明することを狙う。これは単細胞が、如何にインプットシグナルを時間微分して、細胞内で情報処理を行うか、その原理と分子実態の究明を目指すものである。イカ類の精子は環境のpH変化を感受し、遊泳運動のstrait→turn→strait変換(turnの開始と終止)を正確な位置とタイミングで行うことができる。イカ類精子の優れた特徴は、1)strait遊泳とturn遊泳が明瞭に区別され、turnを開始する直前まで精子が経験したプロトン勾配の時間変化を正確に測定できること、また2)turn終了後に変更された遊泳方向は、turn開始前のプロトン勾配中の侵入方向と密接な関係にあることから、時間微分とその処理・応答についての解析が可能である。本研究では、H+濃度勾配において、正と負の精子走行性が如何なる分子と情報処理によって実行されているか明らかにしようとした。まず環境にpH勾配を形成し、これを蛍光プローブでモニターした。この条件下でturn開始地点を調べたところ、pHの上昇変化が0.0025/sec以上必要であり、なおかつpH5.5の閾値を超える必要があった。さらに鞭毛運動を時間分解すると、ターン時に3つの区別可能な鞭毛波形が連続的に繰り返し起こることが観察された。イカ精子は正と負の走光性を示す。正の走行性では、精子がH+濃度の低い方から高い方へ移動する現象で、これは所謂、卵へ接近する精子走化性と類似する。一方、負走化性では精子がH+濃度の高い方から低い方へ移動する現象で、化学忌避物質に対する細胞の逃避行動とよく似る。それぞれの鞭毛運動を解析したところ、ターン時にどちらも3成分の波形変化を示した。これらは、良く研究されているウニやホヤ精子の走化性とは異なるものであることが分かった。
|
Research Products
(1 results)