2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模遺伝子解析データの活用による食品成分の効果の個人差に関する包括的検討
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16K14920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 久典 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任教授 (40211164)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 一塩基多型 / 個人差 / 摂取量 / ゲノム / インターネット / 遺伝子多型 / コーヒー |
Outline of Annual Research Achievements |
疾患とヒト遺伝子多型(SNP)との関連については既に大規模なゲノムコホート研究が多数報告されているが、本研究では、これまで研究報告が少ない食品因子とSNPの関連について研究を行った。食品因子の中でも、コーヒーの摂取量とSNPとの関連については比較的研究が進んでおり、欧米では既にゲノムワイド関連解析(GWAS)により同定されたSNPsがコーヒーの健康増進メカニズム解明の糸口となる可能性が示唆されている。一方で、コーヒーの摂取量に関して日本人集団を対象とした大規模ゲノム解析の研究報告はないため、本研究ではまずコーヒー摂取量とSNPの関係について解析を行った。インターネット経由で募集した日本在住の健康な男女約1万人からコーヒーの摂取量に関するアンケート行い、同時に郵送キットにより唾液試料の回収を行った。アンケートは、1ヶ月あたりのコーヒー摂取量を7段階に分け、回答を得た。唾液試料からDNAを抽出した後、SNPアレイを用いてゲノムワイド(約30万SNPs)に遺伝子型タイピングを行い、pLINKを用いてGWASを行った。GWASによりゲノムワイドな有意水準(p値<5.0×10-8)を満たす遺伝子座を少なくとも2箇所同定した。このうち1つはカフェイン代謝やコーヒー摂取量との関連が既知であるaryl-hydrocarbon receptor(AhR)の近傍にあり、新規のSNPとしてはacyl-CoA dehydrogenase family member 10(ACAD10)の近傍の遺伝子座を同定できた。本研究で関連が明らかとなったACAD10は脂肪酸代謝に関連する遺伝子として知られており、コーヒー摂取による脂質代謝改善作用に関与する可能性が示唆された。また、本研究ではインターネットによるゲノムコホート研究でも食品因子に関わるSNP候補を抽出可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から初年度の研究として計画していた、既に解析を受けてゲノム情報を取得した集団を対象にした、食品摂取に関するアンケート調査を行い、ゲノムワイド関連解析を行うという研究を行うことができた。また、その研究を行った結果、これまで研究されてこなかった食品機能性とゲノムとの関連について新しい知見を得ることができた。食品摂取に関わる新規のSNPも抽出でき、インターネットによるゲノムコホート研究でも食品因子に関わるSNP候補を抽出可能であることが示された。また、研究成果は論文発表および学会発表を控えていることから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
既に解析を受けてゲノム情報を取得した集団を対象に、追加のアンケート調査を行う。これまでの研究から、対象とする食品成分の範囲を広げ、例えば特定保健用食品や健康食品、サプリメント等を摂取しているか、それらの摂取量や期間、摂取頻度についての情報を取得する。サプリメント等で通常利用されない栄養素に関しても特定のものを食品から積極的に摂取することを心がけている場合についてアンケートを実施する。またそれらのアンケート情報の中で母数が多い食品因子の上位いくつかについて、SNP との関連を調べる。その際、これまでの摂取期間が長い、頻度が高い、摂取量が多い、実感がある、といった場合に重み付けがされるようにして解析を行う。関連解析は、線形回帰分析によりp-値が0.05 未満の時に、統計的に有意であったと判断する。この際全ての統計解析にはPLINK (1.07)を使用する(http://pngu.mgh.harvard.edu/purcell/plink/)。このフェーズでは、これまでの研究に加えさらなる食品因子や食品機能性とゲノムとの関連について新しい知見を得られることが期待できる。
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Causes of Carryover |
データ解析を外注に頼らなくて良い項目に絞ったこと、システムの変更は当面必要なかったこと、サンプル作成は次年度に行うこととしたことからこれらを次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由の内訳は本年度に必要となるので、使用予定である。
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Research Products
(1 results)