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2017 Fiscal Year Research-status Report

物質循環促進型垂下養殖施設の自律運用管理を通した環境再生型漁業の創成

Research Project

Project/Area Number 16K14975
Research InstitutionFukui Prefectural University

Principal Investigator

瀬戸 雅文  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (60360020)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords養殖施設
Outline of Annual Research Achievements

テーパ円柱型の外形を有する垂下養殖施設については、平成28年度に定常流場における上下混合流の形成機構を解明した。平成29年度は、実海域で作用する波浪や潮流に伴う非定常流場に適用範囲を拡張し、水理模型実験を実施して上下混合流の形成機構を解明した。鉛直循環式二層流振動流水槽内に養殖施設のテーパ型模型を垂下し、振動流の周期を6~12秒、流速振幅を0.03~16.7cm/sまで段階的に変化させ、低密度PIV法を用いて物体周辺の流れ場を可視化解析した。その結果、流速振幅の増加に伴い後流域の流れパターンは、双子渦の発生、伸長、カルマン渦へと変化し、テーパ円柱型施設では後流渦の発達過程が長手方向に変化することで、施設近傍で主流速度と同程度まで増加する上下混合流の流向が周期内で逆転し、これらの流れパターンは 主流速度/(主流加速度×円柱径)1/2 で評価された。
垂下養殖施設による自律運用管理サイクルを駆動するために必要となる、上下混合動態予測モデルを開発した。能取湖をモデルケースとして、西網走漁業協同組合より2011~2017年における湖内水質調査データを入手し、水温躍層が発達する7月上旬~9月上旬と、青潮を誘発する9月中旬~10月上旬に大別した上で、フル3次元流動場解析モデルと生態系モデルを用いて貧酸素水塊の動態と養殖施設による物質循環促進効果を推定可能な上下混合動態予測モデルを開発した。本モデルはアプリケーションソフトとして提供され、漁業関係者が水質観測項目を入力すると、貧酸素水塊の上昇高さが近似計算され、今後、発生が予測される様々な風条件の中で養殖貝に最も被害を及ぼす最悪のシナリオを抽出し、水深別のDO濃度と6段階の警戒レベルを可視化表示するもので、水質観測データの変化率をもとに貧酸素水塊や警戒レベルの今後の動向を推定し、養殖施設の監視体制フローにフィードバックすることが可能である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

交付申請書に記載した平成29年度の主要な研究項目は、テーパ型垂下養殖施設の自律運用管理サイクルの運用のための上下混合動態予測モデルの開発である。当該年度に実施した研究では、先ず、平成28年度に解明された定常流場におけるテーパ型垂下養殖施設の上下混合促進機構を非定常流場まで拡張し実海域への適用性を向上した。
続いて、能取湖をモデルケースとして、フル3次元流動場解析モデルと生態系モデルを用いて、密度躍層の上層厚、貧酸素層の深度、および上下層の密度差で構成される座標空間で夏季成層期の貧酸素水塊の挙動を、上下層の密度差と貧酸素層の深度で構成される座標平面で青潮発生期の貧酸素水塊の挙動をそれぞれ感度解析した。開発された上下混合動態予測モデルは、当該域で発生した青潮に伴う貧酸素水塊の湖奥部への遡上や移流消滅過程を概ね再現できた。
本年度の研究により、漁業者が自ら貧酸素水塊の動きを捉えて養殖対象種の生産段階に応じて先手を打って対策を講じるための中核をなす上下混合動態予測モデルが構築できた。本モデルによるDO濃度の予測値と観測データを定期的に比較・校正することにより、モデルの精度向上や、気候変動など中長期的な環境変動に適応できる可能性が示唆された。
今年度開発した上下混合動態予測モデルは、次年度に実施するホタテガイ種苗の貧酸素耐性実験の結果を反映させることにより、本研究の最終目標である自律運用管理サイクルの確立に繋がり、本研究は当初の計画どおり概ね順調に進展している。

Strategy for Future Research Activity

平成30年度は、先ず、ホタテガイ0齢貝を対象に、実験水槽内にN2O2混合ガスを曝露し、DO濃度、飼育水温を可変しながら、混合ガスボンベ法を用いて貧酸素耐性実験を実施して、貧酸素水塊に対する本種稚貝の致死条件を解析する。
さらに、ホタテガイ稚貝の貧酸素耐性を、水質条件の非定常性も反映可能なストレス度で評価し、上下混合動態予測モデルとハイブリッド解析することにより、当該域でモニタリングされた水質観測データを入力すると、貧酸素水塊の挙動やホタテガイの斃死リスク(警戒レベル)をタブレット末端上で可視化表示可能な診断アプリを開発する。診断アプリを、当該漁場を利用する漁業関係者に提供し、利便性の向上を図る。
続いて、警戒レベルに応じて、水質監視体制や、監視地点数、監視頻度を決定し、養殖作業時期・工程に応じた施設の運用管理に反映させるための実施手順を確立する。最後に、貧酸素水塊に順応した施設の運用管理を通して、垂下養殖施設による物質循環促進効果が推定され、物質循環促進型垂下養殖施設のテーパ比の最適化や、診断アプリの精度向上に反映させるための実施手順を確立し、施設の自律的な運用管理により、水産業と環境再生が連関した環境再生型漁業の実現を目指す。

Causes of Carryover

旅費が当初の計画より少額の支出となったが、少額のため執行残も含めて、当初の計画どおり次年度で利用する。

Research Products

(2 results)

All 2018 2017

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] 非定常流場におけるテーパ円柱の上下混合促進機構2018

    • Author(s)
      瀬戸 雅文
    • Organizer
      日本水産工学会学術講演会
  • [Presentation] 二枚貝中間育成における自律運用管理プロセスの確立2017

    • Author(s)
      瀬戸 雅文
    • Organizer
      日本水産学会中部支部大会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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