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2018 Fiscal Year Research-status Report

物質循環促進型垂下養殖施設の自律運用管理を通した環境再生型漁業の創成

Research Project

Project/Area Number 16K14975
Research InstitutionFukui Prefectural University

Principal Investigator

瀬戸 雅文  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (60360020)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywords養殖施設
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、垂下養殖施設自体に上下混合促進機能を付与することにより、環境再生と安定生産を両立可能な、物質循環促進型の垂下養殖施設を開発することを目的とし、平成30年度は、漁業関係者が、自ら貧酸素水塊の動きを捉えて、先手を打って対処するための貧酸素水塊の警戒レベル診断アプリの開発を行った。アプリの開発では、水温や溶存酸素濃度が非定常的に変動する実海域におけるホタテガイ稚貝の環境耐性を評価するため、ホタテガイ0齢貝を対象に、貧酸素耐性実験、水温変動耐性実験を実施した。貧酸素耐性実験では、馴致水温を3段階にコントロールした20L水槽内に供試貝を収容後、混合比の異なるO2N2混合ガスを曝露した。貧酸素状況下における0齢貝の致死時間をKaplan-Meier法より推定したところ、0齢貝のDO濃度が0.5mg/l、1.4mg/lの全ての実験区、及びDO濃度が2.2mg/lで高水温の実験区では連続暴露144時間でほぼ全滅し、その他の実験区においては10%致死まで至らなかった。水温変動耐性実験では、20L水槽内に供試貝を収容後、水温段階ごとに浮遊珪藻(Chaetoceros gracilis、初期の細胞密度1.8×104細胞/ml)を給餌し、摂餌速度を計測した。続いて、実験水槽内の水温を一定の上昇率(0.05~0.28℃/min、3段階)で昇温後、最高水温で3時間以上維持した環境下における摂餌速度を計測した。本実験では、非定常過程における稚貝の摂餌量を、定常過程で推定された摂餌速度曲線もとに算定される摂餌量で除した摂餌効率で評価したところ、水温上昇率が0.19℃/min以下の水温急変では1.0に漸近したが0.28℃/minでは1.4程度を維持しており、水温急変現象が稚貝へ与えるストレスが懸念された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の計画では、平成30年度に水質条件が非定常的に変化する実海域の貧酸素耐性を、恒温下の様々な水温条件で実施した単位時間当たりの貧酸素ストレスを時間積算することにより評価する方法(積算ストレス度)を採用する計画であったが、ホタテガイ稚貝の濾水量が水温の上昇速度に強く依存することが、平成30年度に実施した室内実験より確認された。
このため、ホタテガイ養殖海域を調査対象海域として、水温の長期観測時系列データ(1日1回定時観測された30年間日別水温データ)、および単年度の時間別多層水温時系列データより水温急変現象の変動特性を時系列解析し、ホタテガイ養殖海域に発生する水温変動幅や変動周期を調べた。具体的には各データセットを月別波形データに再編し、代表波法を適用して水温の不規則変動波形を解析した。最大日別水温の時系列解析より、ホタテガイ養殖海域の表層部では、初夏から秋季にかけて5~9日周期で3℃~14℃程度の水温変動が認められた。さらに、時間別水温時系列からも、同程度(3℃~12℃)の水温変動が認められたが、変動周期は水深に依存して大きく変化し、水深20m以深では、潮汐の半日周期と符合しながら3時間程度で全振幅に相当する急激な水温急変が生じていた。このため、積算ストレス度の適用限界を解明するための追加実験(溶存酸素濃度を段階的に変化させながら、各貧酸素区における水温上昇率を変化させた場合の貧酸素耐性を調べる)を実施し、貧酸素耐性の評価の精度を向上する必要性が生じた。

Strategy for Future Research Activity

平成31年度は、先ず、ホタテガイ0齢貝を対象に、実験水槽内にO2N2混合ガスを曝露してDO濃度を段階的に変化させながら、各DO濃度区に対して水温上昇率を変化させて、0齢貝の摂餌効率(呼吸効率)や、致死時間を調べ、積算ストレス度の精度向上を図る。
その上で、ホタテガイ稚貝の貧酸素耐性を、水質条件の非定常性も反映可能な積算ストレス度で評価し、上下混合動態予測モデルとハイブリッド解析することにより、当該域でモニタリングされた水質観測データを入力すると、貧酸素水塊の挙動やホタテガイの斃死リスク(警戒レベル)をタブレット末端上で可視化表示可能な診断アプリを開発する。診断アプリを、当該漁場を利用する漁業関係者に提供し、利便性の向上を図る。
続いて、警戒レベルに応じて、水質監視体制や、監視地点数、監視頻度を決定し、養殖作業時期・工程に応じた施設の運用管理に反映させるための実施手順を確立する。最後に、貧酸素水塊に順応した施設の運用管理を通して、垂下養殖施設による物質循環促進効果が推定され、物質循環促進型垂下養殖施設のテーパ比の最適化や、診断アプリの精度向上に反映させるための実施手順を確立し、施設の自律的な運用管理により、水産業と環境再生が連関した環境再生型漁業の実現を目指す。

Causes of Carryover

当初の計画では、平成30年度に水質条件が非定常的に変化する実海域の貧酸素耐性を、恒温下の様々な水温条件で実施 した単位時間当たりの貧酸素ストレスを時間積算することにより評価する方法(積算ストレス度)を適用する計画であ ったが、ホタテガイ稚貝の濾水量が水温の上昇速度に強く依存することが室内実験より確認された。このため、積算ス トレス度の適用限界を解明し、貧酸素耐性の評価の精度を向上する.

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Published: 2019-12-27  

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