2016 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患で治療効果を発揮する間葉系幹細胞亜集団の同定とその解析
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16K15033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀内 基広 北海道大学, 獣医学研究科, 教授 (30219216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / プリオン病 / 神経変性疾患 / 治療効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、間葉系幹細胞 (MSC) を難治性神経変性疾患の再生医療・細胞治療に応用することを目的として、治療効果の高いMSC亜集団の同定を目指す。マウス緻密骨あるいは脂肪組織から、MSCのマーカーとなることが報告されているCD73, CD105, CD106等の各種細胞表面マーカーを指標にMSCの亜集団を免疫磁気分離法により分離して、それらをプリオン感染マウスに移植して、生存期間の延長を指標に治療効果の高いMSC亜集団を特定を目指す。 マウス緻密骨あるいは脂肪組織から、プラスチック付着性細胞を分離後、単球系細胞および造血幹細胞を除くために、免疫磁気分離法 (MACS) により、CD11bおよびCD45陰性の細胞集団を回収した。mMSCのマーカーとなることが報告されている分子である, CD29 , CD44 , CD73, CD90.2, CD105 , CD106 のうち、CD105の発現が緻密骨と脂肪組織で異なることから、これら由来の異なるmMSCsの治療効果を検討した。 プリオンChandler株感染マウスの海馬にmMSCsを移植したところ、緻密骨由来mMSCsを移植したマウスでは、生存期間が168日(陰性対照:155日)と有意に延長した。一方、脂肪組織由来mMSCsを移植したマウスでは、生存期間が154日(陰性対照:155日)と延長は認められなかった。緻密骨由来mMSCsを移植したマウスでは生存期間は延長したが、異常型プリオンタンパク質の蓄積は、非移植陰性対照のプリオン感染マウスと差が認められなかった。 緻密骨由来mMSCsではCD105の発現が認められたが、脂肪組織由来mMSCsでは殆ど発現ししていないことから、CD105陽性のmMSCs集団が、プリオン病に対する治療効果を有する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は特定の表面抗原を発現するmMSCsを分離して、プリオン病に対する治療効果を調べることを予定していたが、緻密骨由来mMSCsと脂肪組織由来mMSCsの表面抗原の発現を調べたところ、前者ではCD105分子を発現している細胞集団が50%程度、後者では非常に少なかったことから、緻密骨由来mMSCsと脂肪組織由来mMSCsの治療効果を調べることにした。その結果、緻密骨由来mMSCsでは治療効果が認められたが、脂肪組織由来mMSCsでは治療効果が認められなかったことから、CD105発現の有無が治療効果の差異と関連する可能性が示唆された。プリオン病に対する治療効果を発揮するmMSCs細胞亜集団としてCD105陽性mMSCsが候補の一つとなることを見出したことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
緻密骨由来mMSCsからMACSによりCD105陽性集団を回収して、CD105陰性の細胞集団との治療効果の差を調べる。治療効果に差が認められた場合、当初予定していた、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現解析を実施して、CD105陽性あるいは陰性mMSCsの相違を比較検討する。また、MSCsのなかで、特に幹細胞性が高い細胞として、MUSE細胞と呼ばれる、CD140a (PDGFR) を発現する細胞集団の存在が報告されている (Houlihan et al., Nat Protocol, 2013)。緻密骨から分離したmMSCs中でCD140a陽性となる細胞集団は非常に少なくMACSで分離することができないが、セルソーターを用いて分離を試み、プリオン病に対する治療効果を検討する。
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